非言語コミュニケーション参考図書・資料

  待田が担当する 「対人コミュニケーション論」の講義の参考資料、特に非言語コミュニケーションの参考資料を紹介します。日本語で書かれ、なおかつ神戸松蔭の図書館・AVセンターにある資料を選んでいます。
   本のどの部分が講義と関連しているか書いていますが、部分的に読むと著者の意図を充分に汲み取れない場合もありますので、本全体に目を通すようにしてください。        2018年12月

 
   非言語コミュニケーション全般、しぐさ
 

『しぐさの社会心理学』 P.ブル 北大路書房 1986

非言語コミュニケーション全般を総説した日本語の本は数少なく、信頼できる内容の本はさらに少ない。この本は非言語コミュニケーションの教科書的な本として信頼できる内容です。しぐさだけでなく、非言語コミュニケーション全般について紹介されています。

 

『しぐさのコミュニケーション』 大坊郁夫 サイエンス社 1998

非言語コミュニケーションを中心に、対人コミュニケーションの研究の成果をわかりやすく紹介しようとしています。この分野は欧米で発展しましたが、この本では日本人による日本人を対象とした研究も多数紹介しています。

 

『マンウォッチング』 D.モリス 小学館 1980

動物行動学の立場から、人間行動を幅広く解説しようとした意欲的著作。特に、人間の身体がコミュニケーションの装置であることを多数の図版とともに示し、多くの人々の関心を非言語的コミュニケーションへと向けさせる役割を果たしました。推測だけで書かれている点もあり、学問的正確さに欠けますが、読み物としては面白く刺激的。

 

『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』 J.ナヴァロ・M.カーリンズ 河出書房新社 2010

元FBI捜査官が、しぐさから人の心理を読む方法を述べた本です。捜査において実際にしぐさから犯人の心理を見破った例も挙がっていますが、犯罪場面というより日常で生かせる知識を書いています。しぐさには文化による違いもありますので日本人にはあてはまらない例もありますが、著者は学問的な知識も持ち合わせており経験だけに頼って書いているわけではないので、単なる読み物以上の本になっています。

 

『テキスト心理学』 橋本憲尚 ミネルヴァ書房 2000

コミュニケーションの文化比較はコミュニケーションについて考える上で重要な側面ですが、私の講義においては断片的にしか触れていません。神戸松蔭の川中先生が、この本の第10章「日本人らしさとは何か」でコミュニケーションの文化比較、異文化間コミュニケーションについて書いておられるので読んでおいてほしい。(第2章「人間らしさとは何か」は私が書きました。コミュニケーションについて書いているわけではありませんが、ついでに読んでみてもらえるとうれしい限りです。)

 
 

 顔、容姿
 

『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』 山口真美 岩波ジュニア新書 2016

顔、顔の印象、表情や目によるコミュニケーションについて書かれた入門書です。顔やコミュニケーションについてわかりやすく書かれた本は、根拠のない情報に基づいていることが少なくありませんが、この本の著者は日本における乳幼児の認知発達の代表的な研究者の一人ですので、心理学や脳科学の研究成果やしっかりとした知識に裏打ちされた内容です。

 

『顔を科学する!』 馬場悠男・金澤英作編 ニュートンプレス 1999

動物の進化の中で顔と呼ぶべきものがどのように生まれ、サルの顔を経て人間の顔になったのか、人類の顔の多様性はどのように形成されたのか、日本人の顔とその変化、日本人の表情、そして現代の日本人の顔の問題点、といった話題を専門家が解説した本です。11人の執筆者の多くはその分野の第1人者というべき人たちですが、平易な解説に努めてくれています。ただ、どの章も重要で興味深い話題を扱っているだけに、各章の分量がやや少ない点に物足りなさを感じます。

 

『日本人の顔』 埴原和郎 講談社 1999

著名な自然人類学者によるエッセイ。頭骨についての基礎知識、日本人の由来、日本人の顔と容姿の特徴とその理由、日本人の顔の変化について書かれています。

 

『顔を読む』 L.A.ゼブロウィッツ 大修館書店 1999

顔の違い、顔の与える印象、顔と性格の関連など、顔について心理学の立場から幅広く論じています。様々な研究の成果が紹介されていますが、それだけに、顔についての心理学はまだ発展途上であり、明確に判っていることがあまり無いることもわかります。

 

『大顔展』 村澤博人他編 読売新聞社 1999

顔に関わる研究者の集まりである日本顔学会を中心に企画された展覧会「大顔展」の図録。顔と年齢、平均顔、顔の進化、表情の解剖学、化粧など顔に関する話題を様々な角度から取り上げています。貴重で興味深い写真がてんこ盛りなだけでなく、第一線の研究者の解説もついており、顔についての入門書として面白く読めます。是非一度目を通してほしい。

 
 

 表情
 

『表情分析入門』 P.エクマン・W.V.フリーセン 誠信書房 1987

表情研究を開拓した著者たちによる、表情研究の代表的著作。たくさんの表情写真とともに表情と感情の対応関係が詳しく述べられています。また、表情の通文化性、文化等による表情の統制についても論じています。

 

『顔は口ほどに嘘をつく』 P.エクマン 河出書房新社 2006

日本語題名からは嘘についての本という印象を持つでしょうが、原題は"Emotions Revealed: understanding faces and feelings"で、外面(表情)から秘められた気持ち(感情)を読み取るという本です。表情研究の第一人者であるエクマンが、代表的著作である「表情分析入門」とそれ以降の表情研究をもとに、表情から感情がどのように読めとれるかをまとめた本です。表情について深く知りたい人の必読書と言えるでしょう。

 

『人はなぜ笑うのか』 志水彰・角辻豊・中村真 講談社ブルーバックス 1994

笑いとその背後にある心の動きという人間心理の基本的事柄について、学問的にはあまり解明されていません。笑いについて論じた本の多くは、学問的とは言いがたい考察や個人的意見を述べているに過ぎません。この本は、「笑い」という表情だけについて、心理学や表情研究からアプローチした数少ない本の一つ。

 

『顔と表情の人間学』 香原志勢 平凡社 1995

自然人類学の立場から顔と表情について述べたエッセイ。

 

『顔と心−顔の心理学入門』 吉川左紀子・益谷真・中村真編 サイエンス社 1993 

顔の進化的起源から、表情、顔の認知、文化の影響まで、顔の心理学的研究の現状を紹介した本。類書が少ないだけに貴重な本です。12人の著者による分担執筆なので、内容のレベルやわかりやすさは章によって異なります。表情と感情の分類、メカニズムについて書かれた第6章、第7章がやや専門的な内容ですが、参考になります。
この本出版以降10年間の顔研究の発展については、第一線の日本人研究たちによる以下の本が参考になります。
『「顔」研究の最前線』 竹原卓真・野村理朗 北大路書房 2004 

 

 

 自律神経系の反応、嘘
 

『新生理心理学』 宮田洋監 北大路書房 1997−1998

生理心理学の方法、成果、応用などを全3巻に網羅しています。出版時点での生理心理学の集大成。自律神経系の反応と測定法については第1巻、ポリグラフを用いた虚偽検出については第2巻で詳しく紹介されています。

 

『暴かれる嘘』 P.エクマン 誠信書房 1992

表情研究の第1人者が、嘘の表出と測定について詳しく論じた本。表情だけでなく、しぐさ、声、自律神経系の反応など詳しく述べています。また、ポリグラフによる測定とその限界についても詳しい。嘘についての代表的な本であり、一般向けに書かれた多くの本の種本です。

 

『ウソ発見』 平伸二(他)編著 北大路書房 2000

犯罪捜査におけるポリグラフ検査の歴史と現状を解説した本ですが、ウソとは何か、子どものウソ、ウソを発見しようとした歴史など興味深い話題も豊富に盛り込まれています。第一線の検査官・研究者たちによって書かれており、信頼できる充実した内容。多数の研究者による分担執筆の場合、学部学生レベルには難しい読みにくい本になることが多いのですが、この本は、できるだけ読みやすくしようという編集努力が見られます。

 

『嘘の心理学』 村井潤一郎編著 ナカニシヤ出版 2013

人はなぜ嘘をつくのか、嘘を見破ることができるのか、といったテーマに対する関心は高いので、いくつもの本が出版されています。しかし、実証的研究成果に基づいていない本が多く、基づいている場合でも、1980年代に書かれた「暴かれる嘘」(上で紹介)などのEkmanらの研究成果を参考にしていることが多いのが実情です。
1990年代以降はどんな研究が行われているのでしょうか。この本はそんな疑問に答えてくれます。嘘に関する心理学的テーマ、例えば「嘘の手がかりの有効性」「嘘を見破る」「嘘をつくのはどのような人か」「生理学的反応による虚偽検出」などについて、実証的研究を簡潔に紹介しています。やや難しい内容の章もありますが、最初から順に読む必要はなく、関心のあるテーマの章・読みやすそうな章から読めばよいでしょう。

 
 

 対人距離
 

『かくれた次元』 E.T.ホール みすず書房 1970

動物行動学をはじめとして様々な学問的知識を総合して、個体空間、対人距離について論じ、この分野の研究の重要性を認めさせた著作。本の中に引用されている個々の知識については古くなってしまったものもありますが、本そのものの価値は今も高い。

 

『人と人との快適距離』 渋谷昌三 NHKブックス 1990

対人距離、パーソナルスペースについて、その定義、研究の歴史、研究方法、研究成果をわかりやすく紹介しています。

 
 

 印象操作、服装、化粧
 

『人間行動学講座1 まとう』 中島義明・神山進編 朝倉書店 1996 

被服行動の心理学、という副題がついています。服装を中心に、装飾、化粧も対象として、その心理学的研究を幅広く集めた本。

 

 

 AV資料
 

『人間関係シリーズ 10 対人コミュニケーション・会話と適応』 文映(企画・製作) サン・エデュケーショナル

AVセンター所蔵の全10巻のビデオシリーズ「心理学ビデオシリーズ; 社会心理学編第1部」の第10巻です。まず、マス・コミュニケーションと対人コミュニケーションの区別、対人コミュニケーションにおけるメッセージの種類、パーソナルスペースが具体的な例とともに解説されています。次いで日常的な会話とメンタルヘルス、特に、言語と非言語メッセージの矛盾によるストレスが、二重拘束理論、クライアント中心療法を紹介しながら具体的に解説されています。

 

『Face to face』 GEMCO 1986 

イギリスBBC の TV for the open University のビデオシリーズ"Communication and education"において非言語的コミュニケーションを取り上げた巻です。会話における表情、動作の一致、視線や手の動きが果たす役割、会話の交代時のしぐさなどを会話場面の映像を用いて説明しています。また、非言語コミュニケーションの文化を超えた共通点や文化差にも触れています。上記リストで紹介している本『しぐさの社会心理学』の著者ピーター・ブルが登場して解説を行ったり、ベストセラー『話を聞かない男、地図が読めない女』の著者アラン・ピーズが少し顔を出しています。英語のナレーションしかついていませんがナレーションを文章化したスクリプト(VHS/1793/スクリプト)を同時に借りれば理解の助けになりますし、英語の勉強にもなります。