神戸松蔭大学図書館 今月の展示

「第26回 執筆者は語る」  (2026年6月22日~2026年8月31日)

 本学専任の先生が、2025年度に出版された図書を展示します。
 「執筆者は語る」と題して、ご自分が執筆した図書を紹介していただきました。
 興味を持った本を読んで、先生に疑問点などを質問してみてはいかがでしょうか?
 




坂本 真佐哉 先生

システムズアプローチを学ぶ : 臨床スキルを高めるヒント / 東豊, 田中究編  

東京 : 日本評論社 , 2025.4

 システムズアプローチとは、数ある心理療法の分野の一つであり、家族療法の文脈の中に位置付けられることが多い。人間の心理状態や行動を人格の内面からというよりは、人と人のコミュニケーションの観点から理解し、そこに働きかけるという特徴がある。
執筆者の一人である坂本は、カウンセリングを行う際にこのシステムズアプローチの考え方を参照しており、担当した章では、その学びのプロセスについて失敗談も含めて開示している。
 また、13名の執筆者の中には、本学大学院の修了生4名(高井、牧、梅野、狩野)が含まれており、活躍中であることがわかる。坂本の心理療法Cの授業を受けるなどして、家族療法に関心の持った人や将来スクールカウンセラーなど心理の専門家になりたい人などにおすすめしたい。




奥井 一幾 先生

いのち教育 : ふれて,学んで,つながって / 坂井祐円編著  

京都 : 晃洋書房 , 2025.8

 みなさんは「いのち」という言葉の語源を知っていますか?
その由来は古代の大和言葉にまでさかのぼるようです。
本書(p.21)にはこのように書かれています。

「い」・・・生く、息吹。「生」「気息」を表す。
「の」・・・属格
「ち」・・・内に宿る力。「霊力」「霊的な力」を表す。
(中略)
「呼吸する内に宿っている霊的な力」というのが、「いのち」の語源的な意味になります。

 本書は、教育の中で「いのち」をどう伝えるか、「いのち」とどう向き合うかについて、主に宗教・哲学・医療・看護・教育の専門家が集い、検討した一冊です。 私が担当する「生活福祉論」で実施しているワークも収録(p.186)されています。
このようなテーマに関心がある方はぜひ手に取ってみてください。




土肥 伊都子 先生

公認心理師をめざす人の社会・集団・家族心理学 / 土肥伊都子編著  

大阪 : 教育情報出版 , 2025.12

 本書は、「公認心理師」の受験資格取得のために必要で、本学の心理学科の専門科目の一つでもある「社会・集団・家族心理学」の授業テキストとして編集しました。大学で社会心理学を初めて学ぼうとしている大学生が、その基本的な内容を一通り学べるものとなっています。
それに加え、従来の社会心理学で「社会」や「集団」の一種として扱われてきた「家族」について、臨床心理学や発達心理学からもアプローチしています。
社会心理学の学びを、最も身近な人間関係である家族の出来事、問題解決にも応用しようという気持ちになってもらえれば幸いです。




日比 優子 先生

人間インタラクション計測ハンドブック / 産業技術総合研究所情報・人間工学領域人間情報インタラクション研究部門編集  

東京 : 朝倉書店 , 2025.11

 人間工学的な概念を整理し、それぞれの概念に基づいた設計・評価のために適用可能な人間計測法を解説した本です。 私は「認知機能の発達」を担当し、乳幼児の注意や記憶について説明しました。
 子どもは散らかった部屋で大人と同じようにはおもちゃをうまく探せません。注意機能の発達からみると、大好きなおもちゃはあらかじめ決められた目立つ場所に置くとよいかもしれません。
また、記憶機能の発達からみると、子どもにシートベルト着用を覚えさせる時は言い聞かせ装着してあげるより、自分で着けることを身体で覚えさせ潜在的に習慣化させる方がよいでしょう。
 子どもや子ども向けの製品に興味がある方、実験や評価に関心がある方、ぜひ読んでみてください。




橘 倫子 先生

3ステップで読める漢字のくずし字 / 淡交社編  

京都 : 淡交社 , 2025.9

 2022年刊行の『3ステップで読める仮名のくずし字』が大変好評で再販となったことから、続編として「漢字のくずし字」を執筆することになり、ステップ1、2を担当しました。
くずし字とは、江戸時代以前に書かれた、ミミズがはったようなつづけ字です。仮名とは異なり、漢字のくずし字は膨大な数があるため、その読解にはコツがいります。 本書はそれをふまえた上で、3つのステップを経ながら、初心者にもやさしく、確実に漢字のくずし字解読のスキルが身につくように工夫した反復学習ができる書籍です。




橘 倫子 先生

清技 : 昭和の茶道を支えた職人たち / 木津宗詮著  

京都 : 淡交社 , 2025.10

 大正から昭和前期の関西を中心に、茶道具を制作した職人について、その人となり、作品などを紹介した「茶道具作者名鑑」とも言える書。第1~3章は武者小路千家の木津宗詮氏の研究成果をまとめたもので、それをフォローする形で各工芸分野の専門家(学芸員)が執筆依頼を受けて第4章「近代の職人の技を知る」を分担執筆しています。
 私は「近代における関西のやきもの~化学技術の革新と伝統技術の継承~」を担当し、明治期に神戸港から輸出された関西の陶磁器や、太平洋戦争中に作られた陶製の手りゅう弾なども紹介しています。




田附 敏尚 先生

語彙主義に基づく言語研究 : 基礎と応用研究 : 郡司隆男先生御退任記念論文集 / 板東美智子 [ほか] 編  

京都 : 淡交社 , 2025.10

 本書は理論言語学・計算言語学研究を長らく牽引してこられた、本学の郡司隆男先生の御退任記念論文集です。
 近年、こうした退任記念論文集が出版されること自体が非常に珍しくなっています。それだけに、多くの教え子や関係の深い先生方が論文を寄せ、本書が出版に至ったことは、いかに郡司先生の人望が厚く、その研究が優れたものであったかを物語っています。
 内容は文法理論の最前線から、「穏当な発話が悪意を持つとき」の研究、はてはマオリ語まで、言葉の基礎と応用を網羅した贅沢な一冊です。私だけでなく、西垣内先生や池谷先生も執筆なさっています。学界をリードしてきた先生の足跡と、最前線の研究の熱量にぜひ触れてみてください!




田附 敏尚 先生

語用論的方言学の始動 = The inception of pragmatic dialectology / 小林隆, 中西太郎, 津田智史編  

東京 : ひつじ書房 , 2025.11

 方言の研究はこれまで、単語の違いや“なまり”の研究は盛んでしたが、「その地域の人々が、相手と関係を築き、意図を伝え合うために、言葉をどう運用しているか」という、生きたコミュニケーションの仕組みに迫ることはできていませんでした。本書は、そこに切り込む画期的な一冊となっています。
 例えば、怒りを伝える場面。関東の「この馬鹿野郎!」に対し、関西では「あほやなあ」とマイルドに表現するなど、罵倒語や表現の選び方一つにも地域特有の人間関係の築き方が表れます。さらに、LINEスタンプや街中の方言看板といった、私たちの日常にある身近なものを分析データとして扱っている点も本書ならではの魅力です。
 言葉の裏にある「暗黙のルール」を知ることで、あなたの日本語観がきっと大きく変わるはずです!