「第24回 執筆者は語る」 (2024年6月3日~2024年8月31日)
「執筆者は語る」と題して、本学専任の先生に、2023年度に出版された図書を紹介していただきました。
興味を持った本を読んで、先生に疑問点などを質問してはいかがでしょうか?
江 弘毅 先生
問い直しファッション考 : なんでそう着るの? / 江弘毅著
東京 : 亜紀書房, 2023.6
2019年の始めごろ、連れ合いが外出するわたしを玄関に立たせて写真を撮って、その日のコーディネートやらアイテムのあれやこれやを喋ったのをFacebookに掲載したところ、すっごい面白がるフォロワーが多かった。
連れ合いつまり妻のコメントは、「大まじめな揶揄」というスタンスで、そこのところにまたまたわたしがいちいち答え、一連の文章にしたのを編集者が「本にしませんか」とWeb連載を持ちかけてくれたのです。
連載が始まってすぐ新型コロナ禍になり、ステイホーム〜在宅勤務で、服やモードについて深く考えることになりました。
そうして「おしゃれは利他である」というところに一歩踏み込んで書いたのが、この本です。
橘 倫子 先生
薄茶器図鑑
(淡交 ; 令和5年増刊号(通巻964号))
京都 : 淡交社, 2023.9
抹茶には、一般的によく知られている「薄茶(うすちゃ)」と、抹茶の量がより多くて濃厚な「濃茶(こいちゃ)」があり、主に前者を入れる容器を「薄茶器」と呼びます。
薄茶器には、最も代表的な器形「棗(なつめ)」のほかに、多様な器形があり、これらをいくつかの類型に整理して取り扱いのポイント、類型における名品などを紹介したのが本書です。月刊茶道誌『淡交』の臨時増刊号として、茶道の稽古に役立つテーマである「薄茶器」に特化し、実用的な情報を多彩な切り口で紹介しています。
本書において、私が担当したのは、類型における名品の選定と解説です。美術館・博物館が所蔵し、展覧会で見かけることも多い薄茶器の名品を、学芸員という立場から鑑賞ポイントと共に紹介しています。
茶道具に興味のある人や茶道を始めたばかりの人から熟練者に到るまで、幅広く活用でき、また、月刊誌の増刊号のため、手ごろな価格で入手できる「図鑑」です。
田附 敏尚 先生
方言地理学の視界 / 小林隆, 大西拓一郎, 篠崎晃一編
東京 : 勉誠社, 2023.5
故・佐藤亮一氏の追悼論文集として編まれた本書は、氏に縁ある方々を中心に、さまざまな研究者が方言地理学という分野に立脚して執筆しており、現時点での方言地理学の到達点と、研究分野としての立ち位置がわかる内容となっています。
ことばの地図が数多く載っているので、初学者ならパラパラとめくって面白い語形や分布を見つけるだけでも楽しいでしょう。レポートや卒論執筆の段階なら、関心があるキーワード(例えば「敬語」「オノマトペ」等)に関連した章を読むと視野が広がるでしょう。もし全部を通読したなら、それだけでもう方言地理学については一通り学んだと言っても良いレベルです。
私も亮一先生(いつもそうお呼びしていました)には大変お世話になっており(主に酒席で)、この中の一篇を担当しました。草葉の陰から面白がってくださるのか、はたまた「つまらない」と断じられるのか。向こうに行ったらお酒を片手に訊きに行きたいと思います。
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