神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「第21回 執筆者は語る」  (2021年6月1日~2021年7月31日)

 本学専任の先生方より図書館へご寄贈いただきました図書を展示いたします。 (2020年度分)
 「執筆者は語る」と題して、ご自分が執筆された図書を紹介してくださいました。
 興味を持った本を読んで、先生に疑問点などを質問してはいかがでしょうか?
 なお、展示している本は展示終了後に貸出できます。




垂髪 あかり 先生

「ヨコへの発達」とは何か : 障害の重い子どもの発達保障 / 垂髪あかり著 (日本標準ブックレット ; no. 23)  

東京 : 日本標準, 2020.3

 感覚的にはわかるが、それが発達か?と問われると、首をひねってしまう、それでは〈ヨコへの発達〉とは何か?と問われると、明確な答えは分からない。そのもどかしさを解くために、〈ヨコへの発達〉の起源に迫ることにしました。〈ヨコへの発達〉は、いつ、誰が、どこで、どのように提唱し始めた言葉なのか、これらを突き止めるために、膨大な史資料収集と考証の末にまとめたブックレットです。
 第1章では、近江学園(滋賀県の知的障害者施設)を創設した糸賀一雄による〈ヨコへの発達〉の初出について取り上げました。第2章、3章では、糸賀が、岡崎英彦(近江学園医師、びわこ学園初代園長)、田中昌人(近江学園研究部主任)らとともに、〈ヨコへの発達〉という考え方を「共創」する過程について、「鍵」となる当時の療育実践を取り上げながら解説しています。第4章では、糸賀が創設した重症心身障害児施設びわこ学園の約半世紀余りにわたる療育実践について取り上げ、時代とともに変化する対象児者の実態に対して、糸賀の思想をどのように継承・実践化したのかについて解明しています。そして第5章では、筆者自らの重症児療育実践を〈ヨコへの発達〉から分析しています。
 ぜひ、一人でも多くの方に本書を読んでいただき、〈ヨコへの発達〉についての理解を深めるための一助となれば、この上ない喜びです。



木鎌耕一郎 先生

地域の基層と表層 : 八戸地域から考える / 木鎌耕一郎, 加来聡伸編  

[大船渡] : イー・ピックス, 2020.3

 本書は、青森県の八戸地域をフィールドにした学際的な地域研究です。八戸地域の産業、生活、福祉、食、宗教、政治などの諸事象(表層)の根底に存在し、その基礎を形づくっている構造的、史的な基盤(基層)について、いろいろな分野の執筆者が記しています。私は、明治初期に東北地方に伝来したハリストス正教(ロシア正教)の信徒となり、県会議員や国会議員としても活躍したパウェル源晟(みなもと・あきら)という人物について文章を書きました。旧知の八戸の仲間たちとつくった本で、個人的に思い出深いです。


青森キリスト者の残像 / 木鎌耕一郎著  

[大船渡] : イー・ピックス, 2015.3

 日本がキリスト教と出会った時期は、16、17世紀のキリシタンの時代と、幕末・明治以降の時代の二つがあげられます。青森県でもこの二つの時期に、キリスト教との出会いがありました。キリシタンの時代、津軽藩を築いた津軽為信父子は都でキリスト教に接し、息子が受洗しています。明治以降にはプロテスタントの宣教がさかんに行われます。本書では様々な人物を取り上げていますが、中でも日本に山岳スポーツとしての登山を教えた岳人ウォルター・ウェストンが、実は聖公会の宣教師であり、冷害による飢饉に見舞われた青森県での救済事業に携わった次第は、あまり知られていないと思います。


津軽のマリア川村郁 (聖母文庫)  

長崎 : 聖母の騎士社, 2009.10

 戦後の北東北地方は、へき地学校の集積地でした。八甲田山麓にある旧平賀町の開拓地で、学校に通えなかった子どもたちのための小さな分校に赴任して、病に倒れるまで教育に心身を捧げた名もなきキリスト者がいました。クララ川村郁という人物です。東京の山谷というドヤ街の人々のために献身し、「蟻の町のマリア」と呼ばれた北原玲子との類比から、クララ川村郁は「第二の蟻の町のマリア」とも評されました。本書は、彼女が病床で記した手記の紹介を中心に、その生涯を辿っています。


聖なる住まいにふさわしき人 : エディット・シュタイン列聖のドキュメント / ジョン・サリバン編 ; 木鎌耕一郎訳 (聖母文庫)  

長崎 : 聖母の騎士社, 2002.2

 エディット・シュタイン(1891~1942年)はドイツのユダヤ人の家庭に生まれ、フッサールのもとで現象学を学び、ドイツ人女性として初めて博士号を取得し、カトリックに改宗してカルメル会という修道会の修道女になった人物です。中世最大の神学者トマス・アクィナスの思想を現象学的に解釈し、十字架の聖ヨハネの研究も行いました。ドイツでナチス党が政権をとってユダヤ人に対する迫害政策が行われる中、避難先のオランダの修道院で逮捕され、アウシュヴィッツ収容所に連行されてガス殺されました。本書はエディット・シュタインが列聖されたことを記念して出版された小さな書籍の翻訳です。



楠木 新 先生

人生は後半戦が勝負! / 楠木新 [述] ; 富山県民生涯学習カレッジ編 (県民カレッジ叢書 / 富山県民生涯学習カレッジ編 ; 113)  

富山 : 富山県民生涯学習カレッジ, 2020.6

 今回の「人生は後半戦が勝負!」 は、 2020年1月に 「富山県民生涯学習カレッジ」の特別講演会で話した内容を主催者が書籍化してくれたものです。実際には90分話した講演録です。寿命が長くなった中で人生の後半戦(私は45歳くらいからだと思っています)がとても大切だと取材から何度も実感したので、それをいくつかの視点から述べています。 「終わりよければすべてよし」 といったところです。
 一番大事なのは、自ら主体的に動くということなのですが、それを「定年準備の7か条」ということで示しています。例えば、「焦らず急ぐ」 「子供の頃の自分を呼び戻す」 「身銭を切る」「個人事業主から学ぶ」などです。これらも取材からの具体事例から整理したものです。




坂本 真佐哉 先生

ブリーフセラピー入門 : 柔軟で効果的なアプローチに向けて / 日本ブリーフサイコセラピー学会編

三鷹 : 遠見書房, 2020.11

 この本は、日本ブリーフサイコセラピー学会が総力(!)を上げて編纂したブリーフ(サイコ)セラピーの入門書です。ブリーフサイコセラピーは、「短期(簡易)心理療法」と訳されます。つまり、心理療法(援助)を短期に提供する、ということです。短期ということには効果的に効率よく、という態度や姿勢が込められています。ただ期間を短くするということだけではなく、質のよい効果的な心理療法を提供する、ということについて研究/実践する学問領域なのです。
 ただし、効果とは何か?とか、効率とは何か?というのは立場によっても違ってきます。また、ブリーフサイコセラピーという言葉とブリーフセラピーという似たような言葉が出てきますが、これは一体どういうことなのでしょうか。それらの疑問は本書の中に収められています。
 心理療法に関心のある人はもちろんですが、坂本の「心理療法C」 の受講生はこれを読むと授業の理解が進むと思います。


槻本 正行 先生

図書館情報学用語辞典 / 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 

東京 : 丸善出版, 2020.8

 本書の初版刊行に際して、編集委員の一人からお誘いがあったことがきっかけで項目執筆をしているとはいえ、<執筆者は語る>というには、あまりにおこがましい気がする。
 初学者から研究者まで幅広く役立つ図書館情報学の専門用語辞典として、1997年の初版刊行後、版を重ねて、7年ぶりに新たに第5版が刊行された。文部省の「学術用語集 図書館情報学編」に収録の用語を解説することをベースに、基礎的な概念、図書館情報学教育、図書館運営、目録、分類・件名、索引・情報検索、資料・メディアのそれぞれに関する専門用語と図書館情報学にかかわる人名や団体名など、約1,800項目を収録している。
 図書館を取り巻く情報技術および学術情報流通を取り巻く環境の絶え間ない変容の中、ほぼ5年強の間隔で項目の追加、内容の改訂がなされ、用語辞典という位置付けから、長い項目でも800字程度で簡潔にまとめられている。
 なお、同書は、辞書・事典の横断検索サイト「コトバンク」収録されており、フリーでアクセスできる。また、知識統合型データベースである「JapanKnowledge (ジャパン・ナレッジ)」にも収録されている。遠隔授業が多いなか、活用いただきたいと思います。


花田 美和子 先生

色彩・意匠学部会30周年記念誌 / (社)日本家政学会[編]  

[東京] : 日本家政学会色彩・意匠学部会, 2008

 色彩・意匠学部会は日本家政学会の研究部会のとして1978年に発足しました。2008年に設立30周年を記念して、それまでの部会の足跡と研究成果をまとめたものが本書になります。
 当部会では設立10年頃より共同研究が始まり、時代のニーズに合わせた研究テーマが取り上げられておりました。特に、2005年から官公庁で始まったクールビズについては、当部会でも大規模な調査がおこなわれました。第1報の「クールビズに関する研究(1)夏季の服装に対する男性に意識」では、60代男性のフォーマル意識が高く、仕事相手に対してネクタイをしていることを重視している傾向が見られ、それ以下の年代は60代の上司の服装に合わせることを意識していました。そこで、ノーネクタイでもフォーマルに見えるデザインや色を考案するという方向に研究は進んで行き、第2報以降、(2)上衣の色彩とデザイン、(3)男性有職者のビジネススーツスタイルに対する意識、(4)ビジネススーツスタイルに対する意識の男女比較について、と継続していきました。
 これらの論文はすべて本書に掲載されています。一般には流通していない本書ですが、松蔭の図書館でぜひご覧ください。


溝畑 秀隆 先生

新臨床栄養学 / 松木道裕, 今本美幸, 小見山百絵編著 (食物と栄養学基礎シリーズ ; 10)  

東京 : 学文社, 2020.4

 この本は、管理栄養士を目指す人のために書かれたものです。
 管理栄養士とは、「傷病者に対する療養のために必要な栄養指導、個人の身体状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識および技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導を行うことを業とする者をいう」と定義されています。特に栄養指導は、臨床医学的な知識と高度の栄養学的知識を備えて実践できるものです。
 本書の特徴は、各疾患の医学的アプローチとして、疾患の定義、病因・病態、症状、診断、検査・診断、治療目標。栄養学的アプローチとして、栄養評価、栄養食事療法、栄養食事指導・生活指導など理解しやすい内容にしています。本書を通して、疾患を知ることが健全な人生を送ることに繋がると思います。
 本書にでてくるそれぞれの分野を専門とする者が執筆しており、第12「12.10非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、12.11胆石症、胆嚢炎、12.12膵炎」、第29「妊産婦・授乳婦の疾患」 は、本学食物栄養学科の溝畑が担当しています。