神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「第20回 執筆者は語る」  (2020年6月1日~2020年7月31日)

 本学専任の先生方より図書館へご寄贈いただきました図書を展示いたします。 (2019年度分)
 「執筆者は語る」と題して、ご自分が執筆された図書を紹介してくださいました。
 興味を持った本を読んで、先生に疑問点などを質問してはいかがでしょうか?
 なお、展示している本は展示終了後に貸出できます。




青木 稔弥 先生

真山青果とは何者か? = Who is MAYAMA Seika? / 飯倉洋一編 ; 日置貴之編 ; 真山蘭里編  

星槎グループ, 2019.7

 「真山青果とは何者か?」という大仰なタイトルがつけらているのは、かつて一世を風靡したにもかかわらず、その全貌が明らかにされることなく放置されていた感なきにしもあらず、だからです。真山青果(1878~1948)の娘である美保(1922~2006)を創設者とする新制作座は、現在、本書の監修者である星槎グループの一員となっていて、星槎ラボラトリー・真山青果文庫には1万点以上の青果関連資料があります。
 青果文庫の調査を国文学研究資料館調査収集委員として担当した縁から「真山青果学術シンポジウム」(2016.12.03 学術総合センター・一橋講堂)のパネラーを務めました。「青果の多彩なる人脈」は、その発表原稿を大幅に改稿したものです。
 青果には、大きく分けて、小説家、演劇作家、江戸文学研究者、仙台出身者の四つの顔がありました。真山青果文庫に所蔵されている青果の住所録(冒頭に「昭和十九年五月於静浦寓居改訂」とあります)の紹介をしつつ、主して第二の顔、第三の顔について述べました。青果の「年譜」の誤りを正し、空白を埋めています。



奥井 一幾 先生

私たちの住居学 : サスティナブル社会の住まいと暮らし / 中根芳一編著  

東京 : オーム社, 2019.3

 本書は、中根芳一編著『私たちの住居学~サスティナブル社会の住まいと暮らし~』(オーム社・2006年)の改訂版です。もともと、都市生活学科の竹田美知先生が「住まいと家庭生活」をテーマに初版を執筆されました。今回の改訂版では、掲載データを一新する形で私がそのパートを引継ぎました。2006年から13年の時を経て、最新の住居学が学べる一冊に仕上がっています。
 私が考える本書の特徴を2つ紹介します。まず、すべてのページに本文と関連した図や表が掲載されている点です。文章を読むのが苦手なあなたも、まるで雑誌を読むような感覚で住居学を学べる構成になっています。
 次に、実に幅広い内容が扱われていることです。例えば「伝統的な住まいの構造」「空間のデザインと心理効果」「AIによる防犯システム」といったパートがあります。
 特に、私が学生のみなさんに読んでいただきたいのは「シングル(ひとり暮らし)の部屋さがし」です。このパートではひとり暮らしの部屋さがしに関する調査を紹介しています。最近はどのようなことが重視されているのでしょう。部屋の広さ?防犯?日当たり?…など、自分自身の考えと比較しながら読んでみると、さらに楽しめると思います。



楠木 新 先生

会社に使われる人会社を使う人 / 楠木新 [著] (角川新書 ; [K-249])  
定年後のお金 : 貯めるだけの人、上手に使って楽しめる人 / 楠木新著 (中公新書 ; 2577)  

東京 : KADOKAWA, 2019.2

 2019年、2020年にそれぞれ執筆した上記2冊の本は、いずれも「人生100年時代」と言われる長寿化への対応という共通のテーマ性を持っています。高齢化というと、すぐに年金や介護の問題が取り上げられがちですが、働き方や生き方、お金に対する姿勢も大きく変化することになります。誰もが第二の人生を持つことになるからです。
 「会社に使われる人 会社を使う人」は、主にこれからの会社員の働き方、生き方について、「定年後のお金」は、お金の貯め方、増やし方、使い方について書きました。よろしければ手に取ってみてください。




江 弘毅 先生

神戸と洋食 / 江弘毅編

神戸 : 神戸新聞総合出版センター, 2019.12

2017年にこの大学に着任してすぐの5月に、神戸開港150周年を記念する「神戸松蔭土曜講座」で、「ミナト神戸の洋食とその系譜」いうタイトルで講演しました。そのすぐあとに神戸新聞総合出版センターから出版オファーがあり、それから1年以内に神戸市立博物館など複数の施設から(500人を超える参加者の市民大学もありました)同様の講演依頼がありました。
 「この本はイケる」。神戸新聞の編集者とそんな期待を共有しながら執筆をすすめ写真を集めたりするのと同時に、都市生活学科の新カリキュラムでの19年前期の「神戸の食と文化」が始まりました。その講義の数回分は、開港以来独特の発展の仕方で日本の洋食に影響を与えた神戸の洋食についての研究だったのですが、神戸の街場の洋食店では、伝統的なカレーライスやビフカツ、料理に使われるデミグラスソースなどが注目され、他所の街にない大人気を博していました。「もう一度、現在進行系の神戸の洋食を取材してみよう」。そう思い、街に出て洋食店を取材しました。なので、最初の講演から出版まで1年半以上かかってしまいました。その甲斐あり書評にも紹介されたりで、地元神戸の書店では今なお平積みのベストセラーになっています。


坂本 真佐哉 先生

今日から始まるナラティヴ・セラピー : 希望をひらく対人援助 / 坂本真佐哉著  

東京 : 日本評論社, 2019.8

 この本は、カウンセラーをはじめとした対人援助職に関わる人のために書かれたものです。私たちは人々の抱える問題や悩みをいったいどのように理解したらよいのでしょうか。本書には、問題や悩みを人間関係の中で捉え、解決や解消を探っていくためのいくつかの視点とヒントについて書かれています。
 悩みの解決は、クイズやパズルを解くことのようにただ一つの正解があるわけではありません。相談に関するコミュニケーションの場では、支援を要する人と支援する人との関係性も大いに影響するものです。例えば、どんなにもっともらしいアドバイスでも、「上から目線」で説教されては、それを参考にしようとは思わないでしょう。
 私たちの抱える問題や悩みの多くは人間関係の中で生じるものなのですが、解決や解消もまた、人間関係の中で見つけることができます。本書は、そのようなプロセスについて主にコミュニケーションの立場から解説したもので、キーワードは社会構成主義です。
ぜひ手にとってみてください。


心理学的支援法 : 公認心理師標準テキスト / 杉原保史, 福島哲夫, 東斉彰編著 

京都 : 北大路書房, 2019.3

 この本は、公認心理師を目指す人のために書かれたテキストの1つです。心理学的支援とは、いわゆる心理療法やカウンセリングのことです。この分野には実に様々な理論と技法があり、世の中には400以上の理論があるとも言われています。本書には、400とまでは言いませんが、わが国で代表的な理論が網羅されていますので、公認心理師や臨床心理士を目指す人には必携です。
 心理的な問題や悩みは目に見えるものではありませんから、その解決法はともすると独りよがりになってしまう危険性があります。学問として認められた理論的な裏付けがあることで独りよがりにならないこと、そのことが支援を要する人を守ることにつながり、占いやその他の民間療法との区別となります。(占いが悪いとは言いませんが、少なくとも「学問」には分類されません)
 本書にでてくる理論はそれぞれの分野を専門とする者が執筆しており、第10章「関係者のシステムに働きかける支援のあり方」は、家族療法を専門とする本学心理学科の坂本が担当しています。

佐藤 友亮 先生

身体的生活 : 医師が教える身体感覚の高め方 / 佐藤友亮著  

東京 : 晶文社, 2020.3

 進学や就職、結婚、起業、引っ越しなどなど、人生における重要な判断というのは、「どちらが正しい」というような正解があらかじめ決まっているわけではありません。こういう判断を行う時に必要になるのが、身体感覚です。本書は、「人間が合理的な判断をおこなうためには、どのように身体感覚を高めたら良いのだろうか?」ということを考えた本です。とくに、「フロー理論」というものを考察・説明することで、この問題について考えています。
 フローは、ゾーンとも呼ばれることがあり、スポーツ選手や芸術家、将棋棋士やチェスプレーヤーなどがその状態に入ることが知られています。しかし、本当はフローは限られた人だけのものではなく、日常生活の中で多くの人が経験するものなのです。フロー経験が多い人生は、充実度が高いとも言われています。
 本書をとおして、身体感覚を高めて充実した人生を送るきっかけをつくってもらえたらいいなと思います。

寺見 陽子 先生

現代の父親の親意識と子育て実践 : 父親の養育性・役割取得を促す教育プログラムの開発について / 寺見陽子編  

京都 : ナカニシヤ出版, 2019.2

 去る2019年2月20日、ナカニシヤ出版より標記の本を発刊いたしました。本書は、平成25年~27年度科学研究費助成金(基盤研究C:課題番号25350953)を受けて行われた研究結果を一冊にまとめたものです。出版に際しては、神戸松蔭女子学院大学から出版助成を受けました。ここに関係諸機関の皆様方に心よりお礼申し上げます。
 この研究の契機は、それまでの筆者の母親研究から、母親自身の父親との関係が母親のいまの子育てにおける夫との関係や地域活動への参加と関連があることが示されたことからでした。今日父親の育児参加が社会的課題になっていますが、その在り方にも疑問がありました。「育児に参加する」父親ではなく、主体的に「自ら育児する」父親への移行を考えなければならないのではないかと。しかし、研究に取り組むうちに、父親の問題は、家族の在り方、その中での夫婦関係や親子関係の在り方と深く関連していることが浮き彫りになり、とても苦慮しました。
 本書は、第一部で現代の父親の養育性と役割意識・育児行動の調査、第二部はその結果を踏まえた考察、第三部は父親の養育性・養育行動と役割意識と高めるプログラムで構成されています。稚拙書ですが、これからの課題解決に向けた礎になればと願っています。

谷川 弘治 先生

遊び活動レシピブック / チャイルドライフカウンシル[著] ; 谷川弘治[ほか]訳  

北九州 : 谷川弘治 , 2013.5

多職種合同ワークショップ実施ガイドライン2.0 for 病気の子どものトータルケアセミナー2014 / 谷川弘治著  

北九州 : 谷川弘治 , 2014.3

子どもと遊び : 遊びのイロハ~子どもにとっての遊びの本質とその必要性を見つめよう! / 原純子, 吉川由希子, 大阪セミナースタッフ著 (多職種合同ワークショップ「病気の子どものトータルケアセミナー」研修資料集 ; 第1集)  
北九州 : 谷川弘治 , 2018.2

多職種合同ワークショップ「病気の子どものトータルケアセミナー」研修プログラム集 第1集~第9集  
北九州 : 谷川弘治


 みなさんは,医療保育や病弱教育ということばを聞いたことがあるでしょうか。医療保育は,子どもが病気になったけれど仕事が休めない時などに子どもを預かる病児保育,入院した時に体調にあった生活と遊びを提供してくれる病棟保育,医療的ケア児の保育など,医療を要する子どもの保育のことです。病弱教育は,慢性疾患や心理面に配慮を要する病気などで入院中の子ども達など,健康面に配慮を要する子ども達の特別なニーズに対応する学校教育です。いずれも歴史は古いのですが,ここ20年余りの間にその役割に対する期待が,いっそう大きくなってきています。
【病棟保育】
 病棟保育は医療保険制度に(小児入院医療管理料の加算として)組み込まれましたので保育士を雇用する病院は増えており,さらに保育士の専門性をさらに向上させるため医療保育専門士資格認定制度が発足しました。病院で働くには保育士資格をもっていることが必須ですが,入院治療中はきめ細やかな配慮や工夫がなければ保育が成立しません。そのため,病院で働きだしてから専門性を高めるものが医療保育専門士資格認定制度です。本制度については,日本医療保育学会ホームページを参照してください。※(1)。
【病弱教育】
 入院児の教育機会の確保もすすみ,小児がん拠点病院の整備に当たって「病弱等の特別支援学校又は小中学校等の病弱・身体虚弱等の特別支援学級による教育支援(特別支援学校による訪問教育を含む。)が行われていること。なお,義務教育段階だけではなく,高等学校段階においても必要な教育支援を行うよう留意すること。」が要件とされるようになっています。
 病弱教育を学べる大学は少なかったのですが,障害のある子どもの学校教育制度が特殊教育から特別支援教育に変わり,特別支援学校教員免許状となった際に教職課程において「知的障害」「肢体不自由」と並んで「病弱者」について学べる大学が大幅に増えたことも,この間の大きな変化です。
【継続的な学びの場】
 子ども達は病気であっても,入院中であっても日々,成長・発達していきます。ときどきのからだとこころの状態は変化していきますので,そのことを考慮に入れながら適切な保育と教育を行うことは高度の専門性が必要です。医療保育専門士認定資格,特別支援学校教員免許状などは,基礎的な知識と技術をもつことを示すものです。しかし,日々出会う子ども達の状況は多様です。同じ病名でも,同じかかわり方ではうまくいかないことが多々あります。さらに医療の進歩によって治療が変わると,副作用や生活規制なども変わってきます。これまでに聞いたことがない病名の子どもと出会うこともあります。そのため,日々のかかわりの見直しや知識の更新など,学びは継続させていかなければなりません。
 私たちは,このような継続的な学びの場の要件として,①身近な場で実施できる,②多職種の視点を共有することで理解を深め,スキルを高めることができる,③実践に活かすことができる,④系統的に学ぶことができる,⑤持続的な運用ができるなどをあげて,アクションリサーチを進めました。※(2)(3)
 このプロセスを通して作成してきたテキストが『多職種合同ワークショップ「病気の子どものトータルケアセミナー」研修プログラム集(第1~9集)』,同研修資料集,同ガイドラインです。これらは私のホームページからもダウンロードできます※(4)。
【子どもらしい生活の保障】
 病気の子どもの保育と学校教育の原点は,子どもらしい生活の保障にあります。強い不安やストレスに曝された状態で,子どもと共にあって子ども本来の力を引き出す取り組みです。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため子ども達は家にいなければならない状況が続いていますが,そのような中で,子どもらしい生活を保障するにはどうすればよいか,試行錯誤が続いています。医療保育や病弱教育が得てきた知見に学ぶことが多くあります。
以下は,自宅にいる子ども達にかかわるときに,大切にしたい視点です。
・子ども達はまわりの様子から大変なことがおきていることを感知して,行動している。子どもの力を信じて,ただしい知識とスキルをつたえていきたい。
・子ども達が思いをため込まないよう,コミュニケーションを大切にしたい。
・子どもらしい生活ができるよう,なにができるかを共にさぐるようにしたい。
・大人が一人で考えないで,さまざまな人々の協力を得るようにしたい。
お家でできるあそび,お家にいながら人とつながるあそびは,いろいろ工夫できます。私もいくつか紹介しました(https://www.facebook.com/ktanigawa)。みなさんも,いろいろ工夫して発信してくださると嬉しいです。
(1) https://iryouhoiku.jp 
(2) https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-23531321/23531321seika.pdf
(3) https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-15K04581/15K04581seika.pdf
(4) https://www.k-tanigawa.com/blank

中林 浩 先生

糺の森 (ただすのもり) 未来のために : 世界遺産を壊す「開発」に抗して : 住民の想いとたたかいの記録 / 糺の森未来の会, 世界遺産・下鴨神社と糺の森問題を考える市民の会 [著] 

京都 : ほむぎ出版, 2019.4

 本書の副題にあるとおり、「世界遺産を壊す「開発」に抗して――住民の想いとたたかいの記録」である。わたしは一連の運動に参加してきたが、「都市政策の視点から見た問題点」という6ページほどの文章を収めている。
 問題の発端は2015年に下鴨神社が境内の南部に分譲マンション6棟を建設する計画を発表したことだった。下鴨神社は「古都京都の文化財」という名の世界遺産を構成する文化財のひとつである。マンション計画の敷地は世界遺産の本体部分と接する場所であり、世界遺産制度のバッファゾーンにある。バッファゾーンは世界遺産が周辺と調和するように守られるためにある。このような場所にマンションを建てるのは異常であることを論じた。また、下鴨神社をすっぽりと覆う糺の森は大都市内の平地の森林としてきわめて貴重な存在である。結果的に大木が50本ほど伐採された。
そしてマンションは建てられた。普通であれば、京都市は景観政策を重んじているのであるから、下鴨神社を説得して止めさせるべきところ、問題が大きくならないようなお膳立てさえした。なお、現在京都市は、同じく世界遺産の仁和寺の前に特例でホテルを建てられるようにする制度さえ用意している。
 1980年代からの住民運動を反映して京都市は2007年ころから景観政策をかなり充実してきたが、基本的に開発優先であることに変わりはない。これは京都市の悪政の一端を糾弾する書である。

中村 博文 先生

時間のかかる営みを、時間をかけて学ぶための心理療法入門 / 小松貴弘, 渡辺亘, 中村博文編著 

大阪 : 創元社, 2019.8
オンラインブックでも、こちらからご利用いただけます。

「技法? 効果? エビデンス? もっと大切なものがあるだろう?」

 本書の帯に書かれているキャッチコピー(あおり文句)です。なかなかに挑戦的ですが、個人的にはとても気に入っています。
 ここのところ、心理療法には、問題(対象/障害/疾病)ごとに、その通りにやれば効果が上がることが科学的に証明されている(エビデンスがある)、正しい手順(技法)があって、あたかもドライバーの先をプラスからマイナスに取り替えるように適切な技法を選択してクライエントに施すのが心理療法家の役割である、といった言説が優勢になっているように思えます。しかし、本当にそうなのだろうか、心理療法とはそういったものなのだろうかという疑問から、本書は生まれました。
 その母体となったのは、共同編著者である小松貴弘先生(本学)と渡辺亘先生(大分大学)、そしてわれわれの師である一丸藤太郎先生(元・本学教授)の研究会です。研究会では、心理療法とは何なのだろうかということを、根本的なところから繰り返し繰り返し、今も検討しています。
 一体何が書かれているのかは読んでもらってのお楽しみとして、心理療法に関心をもつ人たちが「心理療法とは何なのだろうか」ということを考えてもらうきっかけに本書がなれば、著者としてはとても嬉しく思います。

長谷川 誠 先生

教育社会学 / 原清治, 山内乾史編著 (新しい教職教育講座 / 原清治 [ほか] 監修 ; . 教職教育編 ; 3)  

京都 : ミネルヴァ書房, 2019.12

 近年、子どもの貧困や格差の問題に注目が集まっています。2019年10月から幼児教育の無償化がスタートしたことは一定の評価ができるものの、未だ育児をめぐる支援施策や子どもの教育環境が整っていない等、課題は山積しています。
 本書の目的は、現代をリスク社会と捉えた上で、子どもの貧困対策と学力保障について検討することです。はじめに、不安定化する日本社会の教育をめぐる格差問題に触れ、教育投資政策について概観、整理しています。次に、新学習指導要領において重視されている「学力の3要素」が、今後、子どもたちのキャリア形成に大きな影響を与えることや、リスクの個人化が高まる中では、主体的、協働的な学びを通じて得られる力に格差が生じる可能性について述べています。そして、最後に、子どもの貧困対策と学力保障においては「つながり」をはじめとする他者とのかかわりが重要であると指摘しました。
 本書が、教育学を専攻している学生はもちろん、その他の多くの皆さんにとって、教育と格差の問題について考えるきっかけになれば、幸いです。

藤本 浩一 先生

読んでわかる児童心理学 / 藤本浩一, 金綱知征, 榊原久直共著 (ライブラリ読んでわかる心理学 ; 7)  

東京 : サイエンス社, 2019.9

 本書はサイエンス社「読んでわかる心理学」シリーズの1つです。児童心理学とは子どもの心理学という程度の意味で、内容は心理学のほぼ全域をカバーしますので、教職の心理学にも使える汎用テキストになっています。前半に私が発達・学習・認知・人格等を解説し、後半では本学心理学科の榊原氏に臨床系を、そしてロンドン大以来の知り合いで「いじめ」の気鋭の研究者である金綱氏(現香川大)に専門的な事柄を分担してもらいました。
 類書が多いなかで今更出版するからには入門とはいえ新しい内容を詳しく盛り込みたいと考え、しかもそれらをタイトル通り「読んでわかる」ように気を配りました。例えば右頁に図表をまとめて見やすくして左頁で解説するとか、各章末には復習問題やより深く勉強するための参考文献を載せています。4章から7章にかけて頁の下隅に記憶訓練の細工もあります。
 巻末の索引に本文中の青字の重要語句がまとめられ、それらをチェックすることで教職試験等の準備にも本書を利用できますが、心理学を子育てや教育に活用してほしいという共著者たちの願いがありますので、単なるテキストにとどまらず愛読書に加えていただければ幸いです。 
読めばわかる!