神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「神戸を愛した版画家 川西英 生誕120周年」 (2014年11月1日〜2014年11月29日)

川西英の愛した神戸の風景は、今もなお色褪せることなく、神戸の様々なシーンに登場します。
神戸の人々のみならず、神戸を愛するすべての人々に、かけがえのない素晴らしい作品を残してくれた川西英。
今回の展示では、彼が師とした「神戸」と「サーカス」にスポットをあてて展示しています。


川西 英 かわにし ひで(1894-1965)

1894(明治27)年、港町・神戸のルーツである兵庫の町(現・兵庫区)で生まれました。
独学で版画を志し、「自画・自刻・自刷」を貫き、独自の作風を確立していきます。関西における 創作版画の雄として活躍し、1965(昭和40)年、70歳の生涯を閉じるまで終生ふるさと・神戸を離れることはありませんでした。

神戸の街は、港と共に発展し外国のさまざまな文化・人・物に溢れていました。その異国情緒に刺激を受け、「自分に師があったとすれば、それは神戸だ」「この街が持って いる新鮮さ、明るさ、異国情緒といったものに感謝したい」と常々語っており、生涯で二度、神戸を描いた『神戸百景』を制作しています。 一度目は、1933〜36(昭和8〜11)年に活気あふれる戦前の風景と都市風俗を捉えた作品。二度目は、 戦後の変わりゆく風景を1952〜53(昭和27〜28)年・1961(昭和36)年に描いた『新・神戸百景』(描画)です。また、昭和37年(1962年)から2年間にわたり神戸新聞夕刊に掲載されていた『兵庫百景』も 代表作の一つです。

  神戸・兵庫の風景とともに夢中になったもう一つのテーマが「サーカス」です。
ドイツのハーゲンベックサーカスをはじめ、外国のサーカス団が来日すると何度も公演に足を運びました。「スケッチを取る手が驚く早さで動いており、速記の記号のようで人が見ても前の場面の様子が全く判らなかった。ところが家へ持ち帰ればこのスケッチ帳から色鮮やかな原画が仕上がるのには感服した。」と息子で版画家の川西祐三郎氏は当時の様子を語っています。

神戸をこよなく愛した川西英もまた、神戸の人々から深く愛され続けています。そして川西英が描いた 神戸の風景は、今もなお国内外の人々を魅了し続けています。

参考文献:
・『川西英 神戸百景 −百の風景をたどる旅−』神戸市HP 市民参画推進局 広報課http://www.city.kobe.lg.jp/information/public/online/hyakkei/profile/ (参照2014.11.1)
・『川西英が手がけたデザインの仕事 = Kawanishi design works』  シーズ・プランニング, 神戸市広報課編集, 2014.3 


すぐわかる画家別近代日本版画の見かた / 岡本祐美 [ほか] 著 [請求記号:732/8]
創作版画の発展に伴い、昭和前半期に登場した個性派画家として掲載。 他者と比べても、カラフルな色面構成は群を抜いている。

兵庫百景 / 川西英画・文 [請求記号:091/1/56]
昭和37年1月から翌年12月までの2年間にわたり神戸新聞に掲載。 本書では掲載順に、神戸・阪神・東播磨・姫路の前半50作品を収録。
この秋「兵庫百景U」が刊行予定。

川西英が手がけたデザインの仕事 = Kawanishi design works / シーズ・プランニング, 神戸市広報課編集 [請求記号:091/271]
川西英がデザインしたものは生活のさまざまな場面で取り入れられてきました。デザインは神戸やサーカス、祭りなど多岐に渡り、手ぬぐいや算数ドリル・包装紙など身近なところで見ることができました。

恩地孝四郎研究 : 版画のモダニズム = A study of Onchi Koshiro : modernity in Japanese prints / 桑原規子著 [請求記号:732/10]
同時代に活躍した版画家・恩地孝四郎は川西英も夢中になった「ハーゲンベックサーカス」をこのような版画で残しています。英のカラフルで躍動感溢れる作品とは異なった趣があります。

神戸レトロコレクションの旅 : デザインにみるモダン神戸 / 石戸信也著[請求記号:091/1/45-2]
近代神戸のさまざまなデザインを紹介。神戸外国人居留地やハイカラ建築と並び、川西英が紹介されています。このことからも川西英が神戸と深い関わりがあったことがうかがえます。

・神戸ハイカラ案内 雑貨とカフェとスーベニール [個人蔵]
息子で同じく木版画家でもある川西祐三郎氏と共に、ポップで可愛らしい絵は、さまざまな神戸のお土産に今もたくさん登場します。 また、三宮センター街のアーケードや地面には英の「神戸百景」が描かれています。ご存じでしたか? この機会に、意外と身近にある川西英の作品に是非触れてみてください。

(図書館)