神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

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(20121211227)

映画やCMの音楽でもなじみの深いドビュッシー(Claude Achille Debussy)は、150年前の1862年8月22日に フランス イル=ド=フランス( Île-de-France)のサン=ジェルマン=アン=レー(Saint-Germain-en-Laye)に生まれました。
これを記念してドビュッシーについての雑学情報を展示いたします。


☆ドビュッシーはとても几帳面だった?
Debussy : la musique et les arts / 石橋財団ブリヂストン美術館, 日本経済新聞社文化事業部編 [個人蔵]
ドビュッシーの自筆譜はとても綺麗です。通常、自筆譜で譜読みは難しいですが、ドビュッシーの場合は出版された楽譜より自筆譜を見る方が雰囲気が伝わってきそうです。

☆「喜びの島(L'Isle joyeuse)」ってどこにあるの?
ヴァトー (カンヴァス世界の大画家18) / 井上靖, 高階秀爾編  [請求記号:G/1437/18]
世界地図帳 : 平凡社版  [請求記号:290.3/59]
図説ギリシア神話 / 松島道也著 [請求記号:080/35/179] 
1904年に作曲され、1905年2月にリカルド・ビニェスにより初演されたこのピアノのための作品は、ルーブル美術館にあるフランスの画家ワトー(Jean Antoine Watteau 1684〜1721)による「シテール島への船出」から着想されたものといわれています。クレタ島の西北にあるシテール島は、古代ギリシアで、愛の女神ヴィーナスの島ということになっています。
この頃、ドビュッシー自身も妻の元を去り人妻エンマとともにイギリス海峡のジャージー島で過ごしていました。この後ドビュッシーは妻の自殺未遂、離婚訴訟、離婚の成立、愛娘の誕生と喜びと波乱の人生を歩みます。このような背景を知ることにより、より良く作品を理解することができるかも知れません。
※キティラ‐とう 〔‐タウ〕 【キティラ島】 《Kythira/Κθηρα》ギリシャ南部、ペロポネソス半島南端のラコニア湾の沖合に浮かぶ島。イオニア諸島に属す。中心地はキティラ。古代ギリシャ時代、美と愛の女神アフロディテ信仰の地として知られ、後にシテール島の名でフランスの画家アントワーヌ=ワトーや作曲家クロード=ドビュッシーの作品の題材となった。古くから海上交通の要衝であり、しばしば海賊の拠点となったり攻撃を受けたりした。ベネチア共和国、オスマン帝国などの支配を受け、フランス領、英国領となり、19世紀半ばよりギリシャ領。キシラ島。シテール島。

”キティラ‐とう【キティラ島】”, デジタル大辞泉, ジャパンナレッジ (オンラインデータベース), 入手先<http://www.jkn21.com>,
(参照 2012-10-05)

☆「沈める寺」ってどこに沈んでいるの?
沈める寺」への誘い : ドビュッシ-とケルト伝説 / 島松和正著 [請求記号:760.4/102]
前奏曲集 第1集 第1番の「沈める寺」La cathedrale engloutie は「住民の不信仰あるいは王女の嫉妬のせいで神の怒りに触れ、イスの町大聖堂が海にのみこまれてしまう。見せしめのため、その大聖堂は時おり海上に浮かび上がるがやがてまたのみこまれてしまう」※1というブルターニュの伝説に基づいていると言われています。
この本は「沈める寺」についてこだわって研究した本です。
※1 新編 世界大音楽全集 ドビュッシーピアノ曲集1 p.221

☆永井荷風とドビュッシー
ふらんす物語 (名著複刻全集近代文学館) / 永井荷風著 [請求記号:918.6/3-2/12]
永井荷風も1907年から1908年にかけてフランスに滞在し、オペラや演奏会に通い、リヒャルト・シュトラウス、ドビュッシーなど近代音楽家を紹介した最初の人物と言われています。
(ふらんす物語の初版は出版納本の手続き直後発売頒布禁止の処分を受け、ほとんどが押収されました。 この本は仮表紙で残されたものから復刻されたものです。)

☆島崎藤村はパリでドビュッシー自身の演奏を聴いていた!
東京朝日新聞 / 朝日新聞社        [請求記号:G/540-2/23]
小説家として有名な島崎藤村は姪との不倫騒動をおこし、1913年4月神戸より逃げるようにしてフランスへ渡りました。フランス滞在中の紀行文が東京朝日新聞に「仏蘭西だより」として連載されました。
パリ滞在中にガヴォー奏楽堂での演奏会でドビュッシ―自らの伴奏による「ステファーヌ・マラルメの3つ詩」を聴き「非常に渋いサツゼツチイブな調子の音」と書いています。
(島崎藤村は東京音楽学校選科に入学し、バイオリン、コーラス、ピアノを学んでいたことがあります。)

☆日本で初めてドビュッシーのピアノ作品を公開演奏した人は?
ドビュッシーに魅せられた日本人 / 佐野仁美著  [請求記号:762.1/44]
東京朝日新聞 / 朝日新聞社         [請求記号:G/540-1/200]
 日本では、バッハ、ベートーヴェン等のドイツの音楽は東京上野の音楽学校で、グノー、ドビュッシー等のフランスの音楽は、いわゆる在野で広がったと言われています。
「日本の洋楽百年史(第一法規出版、昭和41年1月10日発行)」で確認できる明治におけるドビュッシー作品の公開演奏の記録は、ドイツ系アメリカ人のルドルフ・ロイテル(Rudolph Ernest Reuter)が明治42年(1909年)11月24日に有楽座で行った演奏会で“サラバンデ”を演奏したという記録です。この新聞記事はその演奏会の評論ですが、ドビュッシーの演奏については一言も触れられていません。

参考文献   ★印は展示図書:
 ドビュッシー = Claude Debussy / 松橋麻利著  (作曲家・人と作品シリーズ)   [請求記号:760.8/54/16]
 ドビュッシーをめぐる変奏 : 印象主義から遠く離れて / アンドレ・シェフネル [著] ; 山内里佳訳 [請求記号:762.3/38]
★「沈める寺」への誘い : ドビュッシ-とケルト伝説 / 島松和正著  [請求記号:760.4/102]
 ドビュッシー音楽論集 : 反好事家八分音付氏(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント) / クロード・ドビュッシー著 ; 平島正郎訳 [請求記号:アオ/509/1]
ドビュッシー / 音楽之友社編 ((作曲家別名曲解説ライブラリー.)  [請求記号:760.8/46/10]
音楽のために : ドビュッシー評論集 / A.C.ドビュッシー著 ;F・ルジュール編 ; 杉本秀太郎訳  [請求記号:760.4/14]
ドビュッシーに魅せられた日本人 : フランス印象派音楽と近代日本 / 佐野仁美著  [請求記号:762.1/44]
★東京朝日新聞 / 朝日新聞社 [請求記号:G/540-2/23、G/540-1/200]
★ふらんす物語 (名著複刻全集近代文学館 / 日本近代文学館編) / 永井荷風著 [請求記号:918.6/3-2/12]
★ヴァトー (カンヴァス世界の大画家18) / 井上靖, 高階秀爾編 [請求記号:G/1437/18]
★世界地図帳 : 平凡社版  [請求記号:290.3/59]
★図説ギリシア神話 / 松島道也著   [請求記号:080/35/179]
新編世界大音楽全集 : 器楽編 ; 20 / 浅香淳編  [請求記号:760.8/47-2/20]
★新編世界大音楽全集 : 声楽編 ; 27 / 浅香淳編  [請求記号:760.8/47-1/27]
日本の洋楽百年史 / 秋山龍英編著  [他館より貸借]
★Debussy : la musique et les arts / 石橋財団ブリヂストン美術館, 日本経済新聞社文化事業部編 [個人蔵]


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