神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「第11回 執筆者は語る」 (2012年2月1日〜2012年4月30日)

本学専任の先生方より図書館へご寄贈いただきました図書を展示いたします。
(2011年12月までのご寄贈分です。)
「執筆者は語る」と題して、ご自分が執筆された図書を紹介して下さいました。
興味を持った図書を読んで、先生に感想を述べてみたり疑問点など質問してみてはいかがですか?
なお展示している本は展示終了後に貸出できます。


寺見 陽子 先生
請求記号:369.4/208  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/751  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/752  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/753  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/740  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/743  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/741  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/742  配架場所:第1書庫2層

請求記号:376.1/744  配架場所:第1書庫2層

私の専門は、乳幼児の発達心理学と乳幼児保育学である。乳幼児の発達については、認知と自我の発達の関連に視点をおいた研究をしている。私が傾倒しているのは、ワロン、メルロ=ポンティー、エリクソンである。若いころ、ピアジェの認知構造論を研究していた私は、ワロンやメルロ=ポンティを読んだとき、自己と他者の連続性の中に自我を捉える現象学的視点は新鮮で、目から鱗だった。それ以来、ピアジェの構造的な考えをワロンらの現象学でとらえなおしながら、子どもの心の奥ゆきを考えるのが好きになった。それは、乳幼児期の子どもの心理解には、とても参考になった。また、子どもの育ちにおける他者(特に養育者)の役割を考える上でも重要な示唆を与えてくれた。
だから、保育については、子どもの自我の育ちと内的世界の形成を中心にして、その育ちを促す保育の在り方と保育者の子ども理解と援助、親子関係の形成とその支援など、養育する大人と子どもの関係形成と子どもの自我の育ちを促す保育・養育の在り方に関心を寄せている。最近は、それに関連して、養育者や保育者の心理、養育不安・ストレスの規定要因とストレス・マネージメント、ストレス軽減プログラムの在り方など、子どもの育ちを支える周りの大人やソーシャル・サポートに関する研究にも取り組んでいる。
ここに紹介している本は、すべて、ワロンやメルロ=ポンティ、エリクソンの自我論をベースにして、子どもの心の育ちと大人のかかわりを論じているのもばかりである。特に「子どもの心の育ちと人間関係」は、保育や養育における大人のかかわりの在り方を、自我の発達を理論ベースに編集している。「子どもの理解と援助」「子育ち・子育て支援学」親や保育者向けに、「育児の中での臨床発達支援」「相談援助」「保育相談支援」は専門職を目指す人たちに向けたものである。
本学には、子育て支援ルーム「まつぼっくり」がある。これからも実践を通して、子どもと子どもをめぐる人々の心の育ちと環境について考えていきたいと思っている。


青谷 実知代 先生
請求記号:601/19 配架場所:第1書庫3層

 食品をはじめ、多くの品目で「地域ブランドづくり」が、21世紀に入って、日本全国各地で盛んに行われてきています。生産・流通ばかりでなく、地域団体商標の登録・申請や、それに対する商標権等をめぐる制度的枠組みも整備されてきています。
 ところで、いまなぜ地域ブランドが注目されるか、それは、地域ブランドは歴史・文化・自然に関係した地域資源に密着しているため、小規模・零細企業や農業生産法人は、企業ブランドのモデルを採用しつつ、地域ブランドも併用する可能性が高いといえます。また、育成者権や商標権、地域団体商標、特許などの知的財産の活用も、地域ブランドに関係し、地域の競争的優位性を形成する要因ともなってきました。これはブランド管理の重要な問題も含んでいます。
 そこで、地域ブランドづくりの基礎的なブランド理解から、実践する上での必要な事柄などをわかりやすく解説しています。


中林 浩 先生
請求記号:527/864 配架場所:第1書庫3層

 図解住居学シリーズ」は、住居学として企画しているもので、建築学専門の彰国社でも、ややめずらしい。この本はその「1」で、「2」以降は各論になっているが、「1」は総論というか、原論や歴史、また自然科学的な問題から社会問題に至るまで総合的な構成になっている。これは1999年版の改訂である。
 わたしは第6章「居住地の環境」を担当している。わずか12ページであるが、「居住地の成り立ち」「オールドタウンとニュータウン」「居住地計画の歴史」「環境共生の住生活」という具合に、わたしのカバーする研究分野の要約のようになっている。その分、思い入れもつよく、一回生の必修「まちづくり論」の教科書としている。
 この本はページの三分の二を図表とするという方針で、わたしはほとんどをオリジナルの図表とした。内容上の特徴は、まちづくりの歴史を大づかみにしていること、法律の解説などは手短かにして運動を中心に歴史を組み立てていること、地球温暖化問題を大きくとりあつかっていることなどである。  中国語訳がでると聞いていたがどうなったか。


石井 英真 先生

請求記号:372.5/21 配架場所:第1書庫2層

 本書は、私の学位論文を出版したものです。2000年以降、日本でも「学力低下」が叫ばれ、今年から実施されている新学習指導要領では、教える内容が増え、授業時間数も増えました。また、このような動きと並行して、国際機関や国や自治体によって、さまざまな学力テストが実施されています。そして、場合によっては、学力テストの結果によって、教師や学校がランク付けされるようなことも起こっています。ただ、ここで見逃してはならないのは、こうした学力向上に向けた取り組みにおいては、たくさんの知識を詰め込むことではなく、実生活で知識を使って考える力の育成が目指されている点です。同様の動きは諸外国においても共通に見られます。本書は、アメリカでの学力形成に関わる理論と実践を検討することで、「ゆとり教育」でも「詰め込み教育」でもない新しい学力の捉え方やその教育方法・評価方法について論じています。現在の日本の学力向上政策を批判的に読み解き、よりよい形を構想する上での手がかりとなる一冊です。


請求記号:371/115 配架場所:第1書庫2層

 「コミュニケーション力」「人間力」「学士力」「社会人基礎力」「キー・コンピテンシー」「地頭力」、果ては「女子力」というように、昨今の日本では、「○○力」という言葉が氾濫しています。こうした背後には、さまざまな「当たり前」が崩れ、変化の激しい現代社会(ポスト近代社会)において、学んだ知識がすぐに古くなり、常に学び続けたり、新しい知識を生み出したりすることが求められるといった時代状況があります。さらにそこでは、「○○力」が教育や選抜の基準とされることで、その人の能力や個性をも経済発展の資源として消費されるという事態(ハイパー・メリトクラシーの到来)が起こっています。本書では、こうした「○○力」という言葉の氾濫がもたらす問題状況を明らかにするとともに、そうした問題点を是正する方法を探るべく、初等・中等教育はもちろん、高等教育も視野に収めながら、諸外国の動向も紹介しながら、多角的に論じています。現代社会と教育改革の今をつかむ上で必読の書です。



春木 孝子 先生
請求記号:911/34 配架場所:第1書庫3層

 小池昌代氏は1999年に『もっとも官能的な部屋』で高見順賞を受賞して以来、現代日本で高い評価を受けている詩人です。日常のさりげない情景や経験を、時空を超え、さらには人間や物たちなど存在の境を越え、研ぎ澄まされた感覚器官の働きで新しい発見として捉える詩を書かれます。小池氏の詩を読むことは、詩人の導く生きる不思議さへの共感という経験です。
思潮社から出版された今回の本は、日本の近現代の詩人、俳人、歌人の作品を英語に翻訳し評釈をつけることで、日本語を読めない方々に広く知ってもらうという編者の情熱とその情熱を支える粉骨最新の仕事の賜物であり、参加できたのは深い喜びでした。
 喜び勇んで英訳を引き受けましたが、しかし、一通りの英訳ができてからが大変でした。
なんといっても英語が母語でない者が英訳するということは暴挙です。できた英訳を現代詩学会で口頭発表して詩としての完成度を確認しつつ、訂生に訂正を重ね、原詩を何十回も何百回も読み込みということを繰り返しながら、5年近い時間をかけてようやく自分でもなんとか納得のいくものとなりました。たった12編ですが、小池氏の代表作として選ばせてもらったものです。日本語を母語としない多くの方々が、現代日本の誇るべき詩作品を楽しんで下されば、訳者としては望外の喜びです。