神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「北斎と国芳」
 (2011年7月1日〜2011年7月30日)

葛飾北斎、歌川国芳くによしという二人の浮世絵師をご存知ですか?今年は北斎生誕250年、国芳没後150年の記念年にあたります。この少し世代の違う二人の幕末浮世絵師たちは、共通点が指摘されてはいながら、最近はあまり研究はされていないようです。さて、流派の異なる二人の作品をご覧になって、現代の皆さんの目にはどう映りますでしょうか?お確かめ下さい。

〜展示資料〜

江戸絵画入門 : 驚くべき奇才たちの時代 / 河野元昭監修(平凡社 2007.12) [請求記号:721/218]

北斎決定版 / 浅野秀剛, 小林ふみ子, 高杉志緒執筆(平凡社 2010.11) [請求記号:721.8/60]
「狂歌」とは簡単に言うと、昔の短歌をもじって当時の世相を面白く歌ったものです。江戸末期以前にもそうした作品(?)はあったのですが、“その場限り”という前提のもとに詠まれていたので、記録されることはなかったそうです。北斎の頃になると教養人達が狂歌に関心を寄せ、絵本にして出版しました。こうしたパロディの文化は、いかにも幕末の江戸らしいですね。

北斎冨嶽三十六景の旅 : 天才絵師が描いた風景を歩く(平凡社 2010.1) [請求記号:721.8/59]
葛飾北斎の代名詞とも言える『富嶽三十六景』を、現在のおおよそ同じ地点からの風景とくらべている資料です。同じ場所とは思えないほど様変わりしている場所、当時と変わらず美しい富士山が望める場所、さまざまです。また、北斎の選んだ36の地点が「江戸界隈の風景」、「水辺の風景」、「街道・宿場の風景」、「山・峠の風景」と分類されて、なぜその場所を北斎は選んだのか、考えてみるのも面白いと思います。

北斎漫画 / [葛飾北斎著](芸艸堂 2003.2) [請求記号:721/173/1]
ここで使われている<漫画>とは、現在のマンガ(ストーリーのある絵の連作で、台詞が「ふきだし」で表現される)とは違い、北斎が弟子たちに残した絵のお手本だったそうです。北斎の漫画は、こうした日常の風景はもとより、神話の神さまから草木、昆虫、はては花瓶などの日用品にいたるまで、あらゆる物に及んでいて、その一つ一つが今にも動き出しそうに見えます。

国芳作品目録 / 長田幸徳編著 (三光社 2002.4) [請求記号:721.8/25]
浮世絵研究の最大の難点と言えるのは、その著作者を特定することが困難なことでしょう。浮世絵はほとんどが版画ですので、下絵を描き、それを色別にして版を起こし、さらにその版で印刷するという各工程でそれぞれ専門の職人が分担して一つの作品を創作していたからです。したがって浮世絵には浮世絵師の落款、板元印、幕府の出版許可を示す改印など様々な印があり、浮世絵研究は主に、こうした手がかりをもとに、出版年や浮世絵師の特定または真贋などを考察する、もしくは浮世絵全体を周辺の文化と照らし合わせて考察するものに止まっている感があります。

国芳 / [歌川国芳画] ; 浅野秀剛, 吉田伸之編(朝日新聞社 1997.11) [請求記号:721.8/22/6]
"右:歌川国芳の名前はピンと来なくても、この作品を見た覚えのある方は多いのではないでしょうか。一人の人間の顔だと思ったら大勢の人間でできている、発想の面白さと、半(ほぼ全!?)裸の肉体のグロテスクさが印象的ですね。以前某TV番組で実際に人間が組み合わさって、この顔を作ることができるかどうか、実験した回があったそうです。 左:国芳は大の猫好きで、猫の「嵌め絵」もあるのですが、こちらは歌川広重の『東海道五十三次』をパロディ化した『猫(みょう)飼(かい)口(こう)五十三疋(ひき)』より3枚連作の1枚目です。53の宿場の名をもじった動作をする猫の絵が53匹分描かれています。"

国芳の絵本 ; 2 / 眞俊彦監修・解説(岩崎美術社 1989) [請求記号:721/99/2]
国芳の絵本の中にも、北斎の漫画のような、弟子のためのお手本という目的をもった作品があったそうですが、国芳の晩年に作られたこの『風俗大雑書』は、もっと自由に、筆の趣くままを描きとったものだそうです。絵と絵の関連性やストーリーこそありませんが、ここでは台詞らしき文が書き込まれたもの、ちょっと笑える日常のひとコマなど、より現代のマンガに近い作品になっています。



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