神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「第9回 執筆者は語る」 (2009年10月1日〜2009年10月31日)


今月は、本学専任の先生方が図書館に寄贈くださった図書の展示です。(2009年6月までのもの)
「執筆者は語る」と題して、ご自分の著作を紹介していただきました。
なお展示している本は、展示終了後の11月1日より貸出できます。
一番に借りたい人は予約しましょう。


竹田 美知 先生
『よくわかる現代家族』(やわらかアカデミズム<わかる>シリーズ) 神原文子・杉井潤子・竹田美知編著 (ミネルヴァ書房)
請求記号:367/1100
配架場所:第1書庫2層
「よくわかる現代家族」は、身近にある家族を様々な視点から眺めてみると、まるで万華鏡のように異なる景色が見えてくることを学生のみなさんにわかってほしいという意図で編集しました。
 目次をみるとわかるように、学生のみなさんがこれから歩むライフコースの順番に項目を並べ、それぞれの項目はその分野の専門家にわかりやすく解説してもらいました。
 100近くの見開きの項目には、これまでの家族論では論じられなかったような家族の姿が紹介されていたり、単なる理論に終始せず、統計や事例を用いて実証と結びついて紹介されていたりと、新しい工夫がたくさん盛り込まれています。
 家族に関する講義の参考文献としてだけでなく、卒論のテーマさかしにもきっと役に立つと思います。たくさんの学生の利用を期待しています。

中林 浩 先生
『京都の「まち」の社会学』 鰺坂学・小松秀雄 編 (世界思想社)
請求記号:361.4/202
配架場所:第1書庫2層
第4章「卓越した生活景としての京都の景観」がわたしの分担です。京都市域の二階建のまちに高層ビルが林立するといった景観破壊が、1980年代から激しくなりました。市行政は業者側に立ち,反対する住民運動には耳を貸さないという態度をとり続けてきました(いまでも変わっていませんが)。ところが、2004年に景観法が成立するのを機に、住民運動と京都ぐらいは景観を守れよという国の意向に挟まれて、市は2007年には新景観政策を発表しました。これは都心居住地の高さ規制を31mから15mにするという画期的なものです。
日本では例外的な伝統様式の町並みが守られたという評価ではなく、住民運動の土台にあったのは日常生活を充実するなかで気づかれてきた生活景が守られることになったとみるべきではないか、というのがわたしの論じていることです。他の大都市、神戸でも高層ビルは生活を破壊する悪しきものなのです。
タイトルが示すとおり社会学の本です。わたしの専門は都市計画学で、執筆者10人のうち9人は社会学の研究者です。わたしからいわせれば、社会学の方は都市計画学と研究対象が重なっています。ただ、都市計画学の方が現実に対して即物的にむかいあうので、ある意味で政治的なのです。

増永 理彦 先生
『団地再生 公団住宅に住み続ける』 増永理彦著 (クリエイツかもがわ)
請求記号:527.8/40
配架場所:第1書庫3層
戦後、大都市に集中した勤労者を受け入れるべく厖大な公団賃貸住宅(現UR賃貸住宅)団地が出現した。そのストックは大都市圏を中心にして2000団地(80万戸)ほどである。「団地族」や「2DK」あるいはステンレスの流し台の出現などで一世を風靡したことでも周知である。
団地も時とともに老朽化し、設備の陳腐化が進み再生を考えなければならない時期がやってきた。また同時に、居住者も高齢・低所得化し、団地の再生と合わせて、福祉対応や子育て支援といったソフト対応も考えなければならない事態となっている。
ところが、管理をしている都市再生機構の団地再生は、建替え一辺倒である。まだ十分使用可能な中層住宅を潰して高層住宅に建て替えるこのやり方は、もったいない話である。かつ、高齢者・低所得者は住み慣れた団地を退去せざるを得ないという、2つのサスティナビリティ面で問題がある。この状態をどうするか。事例を取り上げつつ問題提起を行なった本である。

松田 謙次郎 先生
『メディアとことば4:特集 現在を読み解くメソドロジー 』 (ひつじ書房)
請求記号:801.03/66
配架場所:第1書庫3層
この本に収められた論文では、麻生太郎の自称詞(わたし、わたくし、俺、僕など)の使い分けを国会会議録やYouTubeなどからデータを取って分析したのだが、今回ほど論文執筆が時の政治的状況に翻弄されたことはなかった。最初は別な執筆者のピンチヒッターとして、突如執筆依頼を受けた。2、3日で思いついたこのテーマを出版社と編者に伝えたら、みなさんノリノリでゴーサインである。
さっそくデータ収集を始めると、あっという間に麻生は首相になってしまい、私は腰を抜かした。ネタがネタなだけに、首相であるうちに出しましょうと関係者一同で話しているうちに、ほどなくして衆議院解散という話が出始めた。焦りまくって論文を書いていたら、いつの間にか選挙話は立ち消えとなった。そして無事出版となってみると、麻生政権は危機に瀕して総選挙が目前に迫っているのである。私にとってこの一年は、まさに麻生に始まり麻生に終わった一年であった。  (この紹介文は2009年7月に書かれたものです)

宮本 憲 先生
『グアテマラ物語 恐怖の国における愛』 宮本憲訳、ヘンリ・ナウエン著 (聖公会出版)
請求記号:197/158
配架場所:第1書庫1層
中央アメリカにグアテマラという小国があります。この国では1960年から軍事独裁政権とこれに反対する左翼ゲリラの間の内戦が36年間も続き、その間、ゲリラ根絶を目論む政府の暗殺部隊による一般人の拉致や殺害が多発しました。特にマヤ系先住民が標的となり、その数は20万人を超える犠牲者の8割を占めていたと言われます。
本書は、そのようなグアテマラで1981年に暗殺された1人の米国人カトリック司祭の物語です。彼は恐怖の中で苦しむ先住民を見捨てることなく、彼らへの献身的な司牧活動を続けたために殺害されたのですが、そんな彼の人生は、私たち人間のために十字架上で命を捧げられたキリストに忠実であろうとする信仰の歩みでもありました。
グアテマラを訪れた著者ヘンリ・ナウエンは、この殉教の物語を、尽きることのない愛と希望の物語として感謝をこめて描き出しており、読む者を人生の意味に関する瞑想へと誘います。生きるとはどういうことか考えたいあなた、是非一読してみて下さい。素晴らしい本ですよ。
ナウエンはオランダ出身のカトリック司祭で、霊性に関する彼の著作は既に日本にも多数紹介され、広く愛読されています。

村上 敬一 先生
『地方別 方言語源辞典』 真田真治・友定賢治編 (東京堂出版)
請求記号:818/173
配架場所:第1書庫3層
「しんどい」「ほかす」「いけず」…。毎日のように耳にすることばですが、その元になったことば、つまり「語源」は、案外知られていないものです。また、これまでにも多くの「語源辞典」が出版されてきましたが、方言を対象としたものはありませんでした。このような見地から、本辞典では全国各地の代表的な方言について、丁寧な解説を行ないました。
『万葉集』や『源氏物語』にも出てくることばからは、日本語の長い歴史を感じることができるでしょう。また、比較的新しい時代に若者が使い始めて全国に広まったことばからは、「若者ことば」の斬新さや柔軟性が感じられると思います。
ふだんの生活の中から発想されることばの楽しさ、その巧妙さを知り、日本語の豊かさや歴史を実感してもらえたら、と思います。