神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

子(ねずみ)年生まれの本 (2008年1月7日〜2008年1月31日)

今年、2008年は子年、より詳しくいえば、戊子(ぼし つちのえね)の年です。
子年生まれの本を複刻版により紹介することにします。

二度目の還暦を迎えたのは、1888年(明治21年 戊子)発行の二葉亭四迷著『浮雲』第二篇山田美妙著『夏木立』です。『浮雲』は日本最初の近代小説とも称せられる作品で、その第一篇は前年の刊、第三篇は翌年の雑誌『都の花』に掲載されました。山田美妙は、当時、一番の流行作家で、二葉亭四迷と並ぶ言文一致体小説の祖との評価を得ています。

1900年(明治33年 庚子 こうし かのえね)に発行された本としては、徳冨蘆花の『不如帰』『自然と人生』があります。蘆花は徳富蘇峰の弟で、後続する数多くのメロドロマの原型がほぼ出そろっているとも評される『不如帰』は大ベストセラーとなりました。

1912年は明治45年、壬子(じんし みずのえね)の年で、七月三十日に改元して大正元年となりました。この年に発行された本に、石川啄木著『悲しき玩具』長塚節著『土』があります。『土』には、夏目漱石の「『土』に就て――長塚節著『土』序――」が掲載されています。

1924年は大正13年、甲子(こうし きのえね)は甲子園球場誕生の年でもありますが、宮沢賢治の『注文の多い料理店』 『春と修羅』が発行された記念すべき年でもあります。

1936年は昭和11年、丙子(へいし ひのえね)です。この年に発行された本には、太宰治著『晩年』谷崎潤一郎著『蓼喰ふ虫』があります。デビューしたばかりの太宰治が「晩年」と題していることに、1948年(昭和23年 戊子)に自死する予兆があるとする見方があります。


<展示資料>
『夏木立』(918.6/31/5)M
『浮雲』(918.6/3-1/7-2)
『不如帰』(918.6/3-1/20)
『自然と人生』(918.6/32-B/3)
『悲しき玩具』(918.6/32-B/11)
『土』(918.6/33/17)
『注文の多い料理店』(918.6/3-3/30)
『春と修羅』(918.6/3-3/29)
『晩年』(918.6/32-B/30)
『蓼喰ふ虫』(918.6/3-4/18)
『注文の多い料理店』(VHS/2163)
『注文の多い料理店』(CD/1437/14)
『注文の多い料理店』(CD/1438/10・付属資料)


(図書館)