神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「食育」 (2007年10月1日〜2007年10月31日)

近年、食育という言葉が市民権を得て、教育現場だけでなく家庭、地域、企業などにおいても食育の取り組みがなされてきています。
私は21年間、公立小学校に勤務しておりましたが、教員のヒトの心と身体に関する知識の希薄さ、それが故の対応のまずさを痛感してきました。この経験より、単に食育だけでなく健康体育を含む広義の「健康」という教科を義務教育やその後の高校、大学でも創設し養護教諭や栄養教諭などが必修で系統的にしっかり教えていくべきと考えています。そうすれば現在の様々な健康に関わる問題もかなり軽減できると信じています。今回は図書館の展示ですので活字媒体を中心に食育の世界をご紹介しましたが、電子媒体のものも数多くありますし音楽や農作業、調理、ゲームなど生活の様々な場面、事柄を通して食育は可能です。指導者は対象に応じて工夫し、実践して経験を積んでいける楽しさがあると思います。






「健康な子ども」2005年度連載 “養護教諭が行う食育” (日本生活医学研究所)
WHOで世界的に活躍された京都大学名誉教授の家森幸男先生が京大退官後、私財を投じて作られた日本生活医学研究所からの依頼で2005年度1年(毎月)にわたって執筆いたしました。対象は小中学校に勤務される養護教諭ですが、一般の教員も児童・生徒を指導教育する上で基礎・基本となる知識だと思います。最新の調査・研究を紹介するとともに20年余の小学校勤務で培った経験からの私見集です。少し専門的かもしれませんが本学学生の皆様にも参考になる内容かと思います。
「やさいのおなか」(福音館書店) きうちかつ 作・絵
3~5歳くらいの幼児向け絵本です。保育所、幼稚園において保育士・教員と小集団の幼児との言葉のキャッチボールをしながら使用したり、家庭で母と子の間で楽しく読める書です。
「どうしてたべるのかな」(小学館) マンディ・サー 文  マイク・ゴードン 絵  宙野 素子 訳
 イギリス生まれのマンディ・サーとマイク・ゴードンのカラフルで楽しい筆からの絵本。愛育病院小児科部長の岡本暁先生の監修ということで最後のページに解説も載せられています。だいぶ文字の量が多くなって小学低学年向けですね。給食指導にも活用できると思います。
「こびとさんの4つのおさら」(こどもの森) 吉田隆子、大角恵子 文  白井美知也 絵
 赤・黄・緑・白の4つのドアをあけると そこには赤・黄・緑・白の栄養の食べ物がおいしそうに紹介されています。文を書かれた吉田隆子さん、大角恵子さんとも管理栄養士です。絵を描かれた白井美知也さんは元小学校長で、対象は小学中学年程度。赤・黄・緑の栄養三色は食物・栄養専攻の学生であれば誰でも知っていますが、これに調味料類を 白の食品グループにしたところがユニーク。
「お米の秘密」(さ・え・ら書房) 小竹千香子 著 永井素子 絵
 この本は絵というよりイラスト入りで絵本というカテゴリーには入れられないと思います。著者の小竹千香子さんは大学の食物学科卒で高校の先生です。米をかなり本格的に”科学した”という感じの書です。小学高学年から中学生レベル。家庭科の副教材や、家庭クラブの教材などにも使えそう。
「Growing Vegetable Soup」(HarcourtBooks) Lois Ehlert 著・絵
 著者のLois Ehlertさんがどのような作家(画家)か私は全く知識がありません。東京丸の内にある丸善の洋書売り場で見つけました。薄くて売り場での存在感は無いような商品なのですが、とにかくその色が鮮やかで多くの絵本の中で目立つ存在でした。表紙の色使いが実にすばらしい。見開きは白、次のページはブルーという 日本人ではなかなか作れないダイナミックさを感じました。種をまいて、水を与え太陽の恵みを受け、野菜たちがすごいエネルギーでぐんぐん成長していくところからもう野菜スープがおいしいとわかる。一連の構図が大胆にデフォルメされて 栄養関係の方だけでなくイラストを志す方にも参考になる絵本だと思います。言語を超えて幼児にも大人にもおすすめの書。
「Our Apple Tree」(Roaring Brook Press) Gorel Kristina Naslund 著 Kristina Digmam絵
 この絵本はかつてラジオのパーソナリティ(当時はディスクジョッキー)でアイドル的存在だった落合恵子さんが作られたクレヨンハウスの東京店で見つけた一冊です。英語の絵本ですが 大変簡単な文ですし訳せなくてもなんら問題が無い心温まる絵本だと思います。りんごの木の一年とりんごを愛する著者や画家の気持ちが伝わってくる良書と思います。食べ物や自然、人を愛し大切にする気持ちこそが食育の基本だと私は考えています。親子で選んだ本を店内で椅子にかけて読めるコーナーもあって ゆっくり過ごせます。蛇足ですが表参道にあるクレヨンハウスは地下1Fは有機野菜などを中心に調理される自然食レストランがあります。(おいしそうなケーキも売られていましたよ)
(解説 生活学科 阿部としよ専任講師)