神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「サミュエル・ジョンソンの『英語辞典』」 (2006年1月7日〜2006年1月30日)

 サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson)は、詩、小説、演劇、ジャーナリズムの各分野で活躍した第18世紀イギリス文壇の中心的人物であるが、辞書編集者としても知られている。ジョンソンが編集した『英語辞典』(A Dictionary of the English Language)は、出版業者ロバート・ドッズリー(Robert Dodsley)などにより1755年に2つ折版全2巻として発刊された。この辞典はジョンソンの生前に5版を重ねたが、その最も大きな特色は用例をあげて単語の意味を定義していることにあり、この点で『オックスフォード英語辞典』(The Oxford English Dictionary)の先駆となる業績である。
 ジョンソンの『英語辞典』について述べるさいに、しばしば持ち出されることの1つは、言葉の定義の偏りで、その例として最も有名なのは “Oats”(オート麦)の定義、すなわち “A grain, which in England is generally given to horses, but in Scotland supports the people”(イングランドではふつう馬の飼料であるが、スコットランドでは人の食料となる穀物)である。しかし、このような定義の偏りの例はごくわずかで、ジョンソンの『英語辞典』全体が、『オックスフォード英語辞典』と並ぶ、英語辞書編集史における画期的著作であることに変わりはない。
 今回展示したのは、ジョンソンの『英語辞典』の復刻版(AMS社、1967年)であるが、このAMS社版はタイトルページのみ初版(1755年)、その他は第2版(1755―56年)の復刻である。
 尚、永嶋大典『ジョンソンの『英語辞典』――その歴史的意義』(大修館書店、1983年)は、この辞典について多くのことを教えてくれる、きわめて有益な研究書である。

                    (解説 文学部 英語英米文学科 水越 久哉 教授)

(展示資料)
(1) ジョンソンの『英語辞典』復刻版(AMS社、1967年)のタイトルページ
“Dictionary of the English language” 833 / 51 / 1 閲覧室 洋書)

(2) “Oats”(オート麦)が定義されているページ
“Dictionary of the English language” 833 / 51 / 2 閲覧室 洋書)

(3) サー・ジョシュア・レノルズ筆、ジョンソンの肖像画(1769年)、テート・ブリテン所蔵――永嶋大典『ジョンソンの『英語辞典』――その歴史的意義』(大修館書店、1983年)所収
ジョンソンの「英語辞典」 : その歴史的意義 833 / 73 第1書庫 第3層和漢書

(4) サー・ジョシュア・レノルズ筆、ジョンソンの肖像画(1756年)をもとにした銅版画――ジェイムズ・ボズウェル(中野好之訳)『サミュエル・ジョンソン伝1』(みすず書房、1981年)所収
サミュエル・ジョンソン伝 ; 1 930.28 / 328 / 1 第1書庫 第4層和漢書

(5) サー・ジョシュア・レノルズ筆、幼児ジョンソン(想像図)、ハイド・コレクション及びウィリアム・C・クルックシャンク、ジェイムズ・ホスキンズ共作、ジョンソンのデスマスク(1784年)、ナショナル・ポートレート・ギャラリー所蔵――永嶋大典『ドクター・ジョンソン名言集』(大修館書店、1984年)所収
ドクター・ジョンソン名言集 934 / 65 第1書庫 第4層和漢書