神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「現代に生きる源氏物語」 (2006年7月1日〜2006年9月30日)

古代世界最後のそして最高の長編小説といわれる源氏物語は、成立当初から熱狂的な支持を受け、さまざまに享受されながら現代に受け継がれてきました。それは物語の分野だけにとどまらず、和歌や、和歌を基礎的な教養として成立した能、そして美術分野では数多くの『源氏物語絵巻』が生まれました。また1800年代終わりには外国語への翻訳も始まり、源氏物語は外国でも広く読まれるようになりました。現在でも映画や宝塚歌劇・歌舞伎では新作が作られ、また演劇でも源氏物語を下敷きとした作品が熱い支持を受けています。一方で「源氏物語占い」という占いまで登場しており、成立してから1000年もたつという古さをまるで感じさせません。
 1000年近くも脈々と受け継がれ、現代にも読み続けられている源氏物語。今年の夏季公開講座では片岡先生が「きずだらけの源氏物語」と題して講演されます。あわせてこの夏、日本が誇る源氏物語にあなたも挑戦してみませんか?

<展示資料>

谷崎 潤一郎 訳  913.36/59
谷崎は生涯に3度も源氏を訳していて、これは最後のもの。
原文に忠実で意訳も少なく、解釈も正確。文学的にも秀でています。 が、そのぶん源氏初心者には難しいかも。 山田孝夫と玉上琢彌の注釈を参照しています。

円地 文子 訳   913.36/53
一番初心者に向いているのはこれかもしれません。 日本語がきれいで、読みやすい。 女性心理に独自解釈があり、原作を忠実に訳したものではありません。 こちらも玉上琢彌の注釈を利用。

瀬戸内 寂聴 訳   913.36/186
今一番売れている源氏訳。読みやすく、シンプルです。 歌舞伎や宝塚で源氏物語が取り上げられた際の原作にもなっています。アドバイザーには八嶌正治と小山清文がついています。

源氏物語繪巻 複製   特別書庫 721/180
あさきゆめみし  大和 和紀  913.36/106
多分、一番読まれている源氏物語でしょう。手っ取り早くあらすじをつかむのには最適。きっと皆さんも試験対策に読んだのではないでしょうか。ただし、原作に忠実なものではありませんし、宇治十条は含められていません。しかし漫画といえども、源氏物語を広く読ませた、という功は認められても良いと思います。また漫画だからと馬鹿にできない点もあります。 その代表例は、国宝「源氏物語絵巻」(徳川本)の構図をそのまま生かしている箇所がある点ではないでしょうか。下は『柏木』の場面。どうですか、同じではありませんか?絵巻と見比べながら読んでみるのも面白いかもしれませんね。


源氏物語釈評 玉上琢彌  913.36/1
谷崎と円地が参考にした人の注釈書です。解説・本文・注釈・現代語訳とあり、自分で訳してみたい人、もうちょっと突っ込んで読んでみたい人にオススメします。

能 葵上  AVコーナー  VHS/917
源氏物語は文学だけではなく、演劇や美術にも影響を与えています。もちろん世界遺産になった能楽にも、源氏物語を原典にとったものがいくつかあります。その中でも「葵上」は一番有名なものでしょう。タイトルは「葵上」ですが主人公は六条御息所。場面は生霊となった御息所が葵上に憑付いて葵上を殺してしまう、あの場面です。演能は昭和10年と古いものですが、伝説の役者の鬼気迫る名演技を鑑賞するのはいかがですか?

偐紫田舎源氏  918/26/88-89
江戸時代のパロディ。

女人源氏物語  瀬戸内寂聴  913.6/821/1-2
源氏に登場する女性の一人称で書かれた源氏物語。

窯変源氏物語  橋本治  913.6/128/1-14
光源氏の一人称で書かれた源氏物語。  源氏供養(913.36/158)と併せてどうぞ。

新源氏物語  田辺聖子(田辺聖子全集所収) 918.68/381/7
現代語訳に近い、現代小説風源氏物語。

(図書館)