神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「自著を語る No.3」 (2005年10月1日〜2005年10月31日)

本学専任の先生方より図書館へご寄贈いただきました図書を展示いたします。 (2005.4以降のご寄贈分です。) 「自著を語る」と題して、ご自分の著作を紹介して下さいました。
興味を持った図書を読んで、著者の先生に感想を述べたり、疑問をぶつけてみてはどうでしょうか。
なお展示している本は、展示終了後の11月1日より貸出できます。今すぐ予約しておきませんか?




『あすの健康と調理 : 給食調理へのアプローチ』 
三輪里子監修 ; 市川芳江 , 山本誠子編著 ; 荒田玲子 [ほか] 著
アイ・ケイコーポレーション , 2005.4

この本は栄養士養成施設での調理実習用教科書として編集しました。栄養士の仕事のひとつに体に必要とされる種々の栄養素を、食品に変換し、それを料理とし、さらに献立として組み合わせたものにする仕事があります。それらを行うための知識・技術は調理実習で基礎を、給食経営管理実習で実務に必要なことを学びますが、この本は、料理数を多くし、索引を工夫して調理実習だけでなく、給食経営管理実習でも使えるようにしました。またこの本は一応調理実習用の教科書ですが、料理に関心のある方どなたにも使っていただけるものです。日本料理・中国料理・西洋料理ごとに献立として掲載してあり、フローチャートで作り方が示してありますので、そのまま見ながら作ることができます。

市川 芳江 助教授




『トラウマへの対処 : トラウマを受けた人の自己理解のための手引き』
J.G.アレン著 ; 一丸藤太郎訳
誠信書房 , 2005.3

 幼児虐待、性被害、自然災害、事故といったような過酷なトラウマを体験した人のなかには、その結果として種々の心身の障害、対人関係の不調、生きていく上での困難さなどに陥り、長い間にわたって苦しむ人が少なくない。こうした被害者たちには、心理学的および精神医学的援助が役に立ってきたが、それと同時に被害者自身が自分が受けたトラウマによって心身にどのような変調が起こり、どのような生きていく上での困難さが生じてきているのかを理解することが必須とされている。本書は、トラウマを体験した人が自己理解を進めるための手引きとなるものであるが、同時にトラウマを受けた人の援助に携わる専門家にとっても役に立つような最新の研究成果が手際よくまとめられているものでもある。

一丸 藤太郎 教授


『テクストの地平 : 森晴秀教授古稀記念論文集』 

富山太佳夫編 : 加藤文彦編 : 石川慎一郎編
英宝社 , 2005.3

大きな分量の本なので、最初は手に取るのをためらうかもしれませんが、内容はなかなか多岐に渡っておりまずは目次に目を通して欲しいと思います。表題の「テクスト」を3つのパートに分け、それぞれ「I テクストの自立−近代文化の中のテクスト」「II テクストの変容−近代から現代へ」「III テクストの拡張−現代文化の中のテクスト」と時を軸に整理されています。必ずどこかに自分の研究テーマに即したもの、あるいは興味を引かれるタイトルが見つかると思います。
私の「カズオ・イシグロの文体」は「III」に含まれています。その名の示すとおり日本生まれの現代作家であるイシグロは幼い時にイギリスに移住し、多くの味わい深い作品を生み出し続けている作家です。英語圏の中では極めて権威の高い文学賞のブッカー賞を始め数々の文学賞を受賞しています。彼の作風の文体的な特徴を捉え、どのような文体が彼の作品の持ち味である「余韻」や「情感」を生み出しているのか、その特徴を分析したものです。
山内 啓子 専任講師




『日本のアヴァンギャルド』
和田博文編
世界思想社 , 2005.5

 「アヴァンギャルド」ってごわごわして何となく怖い感じのする言葉ですよね。それに文学より抽象絵画などをイメージしやすいから、何となく難しそうな気もしますよね。実際、私もこのあいだ本屋さんの美術書の棚で、この本を見かけかました。本屋さんも、きっと怖くて、中身をはっきり確かめなかったのでしょう。
 でも、皆さんは、手にとってパラパラ頁を繰ってみてください。いろいろな図版があるでしょう? そのほとんどが詩集の表紙だったり、詩作品そのものだったりするのです。へえ、これでも詩なの? そんなふうに、まず呆れてください。これなら下手な絵の方がマシじゃない。そんなふうに、馬鹿にしてください。ただ、そこで本を閉じてしまわないでほしいのです。
 これは変な詩の本です。けれども変な詩を作ることって、とても大変なことなんです。だから、呆れたり、馬鹿にしたりしたあとで、詩人たちがどうしてそんな変なものを作ろうとしたのか、作るのにどんなに苦労したかを、自分なりにじっくり考えてください。自分で思いきり変な詩を作ってみるのもいいかもしれませんね。

國中 治 助教授




くもしょう伝伏見院筆本』 

片桐洋一監修 ; 八雲御抄研究会編
和泉書院 , 2005.3

 『八雲御抄』は鎌倉時代の初め、順徳院によって著された歌学書です。膨大な歌語や歌枕が集成され、歌会・歌合の故実や歌の注釈、歌論などもまとめられています。十四歳で天皇に即位した順徳院は、和歌に優れ、学問に熱心な天皇でした。承久の乱によって、佐渡へ配流となった後も、和歌を詠み、『八雲御抄』の執筆を続け、在島二十一年、その地で崩御されました。
 ここに翻刻、紹介する、文化庁保管の重要文化財、伝伏見院筆本『八雲御抄』は、伏見院の真筆ではありませんが、その同時代(鎌倉時代中後期)に書写されたと見られる本で、現存最古の『八雲御抄』の写本です。これまで、現存する諸本は、初稿本と、佐渡遷御後に改訂された再撰本の二系統に大別されてきました。しかし、この伝伏見院筆本は両者の中間的な本文を有しており、『八雲御抄』の成立を考えるうえでも、貴重な本といえます。今後、『八雲御抄』の研究は、該本を基本に進展することになるでしょう。

田中 まき 教授





『第二版 中国書道辞典』 

中西慶爾編
木耳社 , 2005.4

   大それた標題に後込みしている。元より自著ではない。初版は中西慶爾氏が当時第一線の中国学や書道家の協力を得て40年の歳月をかけた文字通り畢生のライフワークである。私などの手に負える代物ではない。なのに改版に関わることになった。その大概は本書巻頭の「第二版にあたって」に記した。また仕事の実際については「研究紀要第42号」「文林36号・37号」を参照されたい。考えてみれば本校に勤務したことがその起点になっている。長い時間をかけた割には不備が目につき忸怩たるものがある。
 初版にはなかったルビを付した。特に難しい訓読については有益だろう。僅かながら不明漢字があり読みや用例が判らない。これらの調査確認は今後の課題である。
 書道など縁遠いものと思われるが、日本に大きな影響を与えてきた中国を語る上で非常に大きな比重を占めている。政治、経済、文化いずれも書に関わる歴史、人、文物を通して深い理解を得ることができる。大いに本書を利用していただきたい。

花田 尊文 専任講師