神戸松蔭女子学院大学図書館 今月の展示

「自著を語る」 (2004年9月27日〜2004年10月16日)

本学専任教員の出版物については、学報に年2回掲載しています。 その中から本学図書館にご寄贈いただきました図書を展示いたします。 「自著を語る」と題しまして、先生方にご自分の著書を紹介していただきました。 興味を持った図書を読んで、著者の先生に感想を述べたり、疑問をぶつけてみてはどうでしょうか。


『外見とパワー』  K.K.P.ジョンソン S.J.レノン 編  土肥伊都子[ほか] 訳

北大路書房 2004年7月

 自分らしさを示すものの一つに,外見があります。背が高いか低いか,色白か色黒か,太めか細めか。これらの特徴はなかなか変えるのが難しいものですが,それらに加えて,私たちは服装や化粧,髪型などを自由に変えることができます。では,外見を変えることで,私たちはどんなパワーを手にすることができるのでしょう。それには,個人の内部に向かう内なるパワーと,個人が関わりをもつ他者に向かう外なるパワーがあります。お気に入りの服装をすれば,自己満足し元気が出ますが,うまくヘアスタイルが決まらない日は一日憂鬱になってしまいます。ユニフォームを着ることでチームのパワーが全開になることもあれば,TPOにはずれた服装で,周りの皆から白い目で見られて意気消沈してしまうこともあります。外見と心は,「見かけじゃないよ,中身だよ」などといわれるように,対極にあるもののように思われている節があります。でも決してそうではないことを,この本は教えてくれるでしょう。
人間科学部 心理学科 土肥伊都子 助教授



『内観ワーク : 心の不安を癒して幸せになる』 三木善彦 三木潤子 著

二見書房 1998年8月

 心理療法の多くは欧米で生まれであるが、内観療法は欧米でも評価され実施されている日本生まれの心理療法である。本書は創始者・吉本伊信の教えを受けた筆者と奈良内観研修所所長の妻による内観入門書であり、内観によってさまざまな心の問題を解決した人たちの事例が豊富に紹介されている。内観とは自分の人生を「世話になったこと」、「世話をして返したこと」、「迷惑をかけたこと」の3視点から振り返る方法であるが、これによって自分自身や両親をはじめ身近な人々に対する認識が変化し、よりよく生きていくための指針を発見していく。こうした心の変化に応じて、不登校や非行、過食や拒食、親子や夫婦の不和、引きこもり、うつ状態、薬物依存などを克服する糸口がつかめる。
 本書には読者が自宅で内観を行うためのワークシートを用意し、質問に沿って、過去の出来事を書き込み、その結果、ほんとうの自分に出会うことを意図している。

人間科学部 心理学科 三木善彦 教授

※今回三木先生よりご寄贈いただき、展示しているその他の著書は下記のとおりです。
『内観療法 : 自己理解と自己革新の方法 三木善彦 著 ヘルス研究所 1992年1月
『心の宝と出会う本 : 内観であなたも生まれかわる』 三木善彦 著 東横イン東京内観研修所 1999年1月




『竹中郁 詩人さんの声』 安水稔和 著 

編集工房ノア 2004年6月

 竹中郁は明治三十七年(一九〇四)に生まれ、昭和五十七年(一九八二)に七十七歳で亡くなった。今年は生誕百年に当たり、没後二十二年になる。そのことを念頭に置いて本書を上梓する。
 T部には詩人論を集めた。ほとんどがこの十年間のものだが、二十年以上も前のものがいくつかある。竹中郁=光の詩人の根拠の一端を示せたと思う。
 U部には講演、V部には対談を集めた。いずれもこの十年間のものである。対談相手の石阪春生さんは竹中郁の甥で画家。杉山平一さんは竹中郁と親しい詩人、竹中郁没後に刊行された『竹中郁全詩集』を足立巻一さんとともに編集した。講演四本対談四本で竹中郁のこと、その周辺の詩人たちのことを知る糸口を語れたのではないか。
 若年の頃から敬愛する私の<詩人さん>竹中郁の本をここにまとめることができたことは、私にとって大きな喜びである。生の詩人、光の詩人、竹中郁の姿がますます明らかになり、詩人のことばが久々にしっかり届くことを願おう。

文学部 総合文芸学科 安水稔和 教授



『生きたことばをつかまえる』 レズリー・ミルロイ 著  松田謙次郎[ほか] 訳

松柏社 2000年10月

 帯の宣伝文句にあったように社会言語学の「ウラ」を知りたい方へ 残念ながらあまりわからないと思います。どうぞフィールドワークに参加してください。すぐにわかります。
 表紙に惹かれた方へ よくぞ言ってくださいました。訳者一同この表紙と恋に落ちました。出版されて、初めて見たのですけれど。
 タイトルに魅力を感じた方へ 土壇場で、慶応大学そばの騒がしい喫茶店で2,3人で決めました。土壇場の発想にはやはり見るべきものがあります。念のため付け加えますと、タイトルで受ける印象ほど簡単でとっつきやすい本ではありません。
 本が厚いと思った方へ 面白そうなところだけ読みましょう。ちなみに私の担当箇所は、第6章・7章です。卒論ネタがゴロゴロしてます。
 翻訳ものはなぁ、と思った方へ 翻訳ものはなぁ、と言われてもなぁ。英語だとかなり難しいです。でもこの分野では欠かせない名著です。なので翻訳しちゃいました。

文学部 英語英米文学科 松田謙次郎 助教授



『ことばの科学ハンドブック』
郡司隆男 西垣内泰介 編著  Joseph Emonds 松田謙次郎  松井理直 橋本力 著

研究社 2004年2月

 典型的な人文科学の分野と考えられていたことばの研究は,20世紀後半から自然科学に近い方法が用いられるようになり,心理学などの隣接分野との関係が密接になっているだけでなく,コンピュータによって人間の言語の音声や文構造を処理したり,文章や発話のデータを蓄えて高速に検索できるようにするなど,情報科学との接点も多くなっています。このような状況を背景として「言語科学」ということばが使われるようになっています。
 この本は,本学情報言語コースの担当教員が現代の言語科学の基本的な考え方を解説して,「言語テクノロジー概説」などの授業でテキストとして,より高度な内容の授業への橋渡しとなるよう意図して共同執筆したものです。第7章ではコンピュータを使ってことばの研究をする方法を解説し,各分野に関連するソフトウェアやウェブサイトの使い方を説明しています。
 本学の授業から生まれたこの本は,既に他大学の概論授業で好評を得ています。次はもっとコンピュータに焦点を当てた本を出す予定です。
*橋本力 は本学大学院博士課程学生です。

文学部 英語英米文学科 西垣内泰介 教授



『ヨブ記 箴言』  勝村弘也  並木浩一 訳

岩波書店 2004年3月

『ヨブ記・箴言』は、岩波書店から数年にわたって刊行されてきました旧約聖書の翻訳シリーズ(全15册)のラストとして今春出版されました。ヨブ記の担当は国際キリスト教大学の並木浩一教授で、箴言が私の担当となっています。このシリーズでは、聖書本文(ヘブライ語)の翻訳だけではなく、各ページの下段に注釈がつけられており、さらに頻繁に出てくる重要な語句は巻末に「用語解説」としてまとめて説明が行われています。また各文書に関する「解説」にも相当のページ数が当てられて、ちょっとした「論文」になっています。近年の学界では、箴言をはじめとするいわゆる知恵文学に関する研究が、エジプト学者をも巻き込んで非常にさかんになっています。今回の箴言の翻訳には、最近の応報思想に関する論争や古代エジプトの文学との並行関係に充分な配慮がなされています。注釈に出ているエジプト文学からの引用はすべて、原典のヒエログリフから独自に翻訳したものです。

文学部 総合文芸学科 勝村弘也 教授