図書館の風景

図書館職員・図書館サポーター合同研修会として「図書の修理ワークショップ」を開催しました。

大阪で紙の文化財の修復及びレプリカの制作などの仕事をされている株式会社工房レストア の方々に来ていただき、「図書の修理ワークショップ」を6月9日に開催しました。



まず、紙資料の修復について工房レストアの方の講義を受けました。
修復の原則は・・・・オリジナルの状態を最大限保存すること、後で元に戻すことが可能(可逆性)であるように修復すること、 安全な材料を使用すること、再度修復が必要になった場合のために何時どのような状態になり、それに対してどのように手を加えたかの記録を取ること。 紙資料にやってはいけない処置として、セロハンテープの使用はもちろん、 図書の修理用として販売されているテープも使ってはいけないとのこと。残念なことに、すでにこのテープを使用して修理した本が再度破損し、テープの跡がこびりついてしまっている資料もあります。
図書館で行う修理は博物館で行う修復とはおのずと違ってきます。図書館で方針を明確にし、判断基準を作ることが大切とのお話でした。

その後、よくある事例として、ページが外れてしまった本の修理の方法を全員で聞きました。


和紙を水切り(目打ちなどで切りたいところに線を引き、その上を水筆で濡らし、手でちぎる。ハサミで切ると違い繊維が毛羽立ち、より資料の紙となじみやすくなります。 その後、和紙にでんぷん糊をつけるます。レーヨン紙等を利用して、養生し、不要なところに糊がつかないようにします。

外れたページをクリアファイルなど薄いプラスチックを利用して外れたところに入れます。


レーヨン紙などはさんで余計なところが張り付かないようにして、接着面を密着させます。
この作業を外れたページすべてに行います。なかなか大変な作業です。

この方法を用いて修理した本の一冊はこちら。朝日新聞縮刷版です。この本はとても重たく、しばしば複写利用されるためページが外れやすい資料です。
この資料の修理を担当した人です。(楽しく作業しています!)→


一通り説明を聞いた後、工房の方々のアドバイスをいただきながら各人の担当資料を修理しました。


背が外れた本の補修をしています。 ゆるんだ背は背固めし直してから、元の背表紙を利用して新しい背を作ります。


図書館サポーターの学生さん3名も参加してくれました。


ページが外れてしまった本の修理その2。ノド部分に筆で糊をつけます。


溝の破れた本の補修。表紙のクロスを持ち上げ、寒冷紗と呼ばれる布を挿入しています。


ほとんどのページが外れてしまった無線綴じの本。いったんバラバラにし、古いボンドを取り除き、固定します。 固定した状態で背にのこぎりで糸を挟み込む溝を入れていきます。


まんべんなく木工用ボンドを塗り、のこぎりで切った溝にタコ糸をはさんでいきます。その後さらに木工用ボンドを塗りこみ、乾かし、さらに塗りこみを数回繰り返した後、表紙をくっつけます。



以前修理のために使用した図書修理用テープの跡がネチネチと付着しています。これを除去するためにアセトンという薬品を使います。
揮発性の薬品のため、充分換気をしなければなりません。


和本を保存しておくケースを帙(ちつ)といいます。古い本の中には帙も傷んでいるもののあります。不要になった帙を分解して仕組みを教えていただきました。

当日までに図書修理担当職員作の資料により各自本の仕組みを勉強しました。 大変有意義な時間を過ごすことができました。今後図書館サポーターにもこの技術を伝授し、傷んだかわいそうな本たちの治療にあたりたいと思います。
学生の皆さんも図書の修理をやってみたいなと思われたら、是非お気軽に図書館職員や図書館サポーターに声をかけてくださいね!

〜今回修理した資料 (順次アップ予定)〜
Before After
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