神戸松蔭の教職員・スタッフが心理学関係の本を紹介するコーナーです。 心理学のページトップ
No.2
 嘘の心理学  村井潤一郎編  ナカニシヤ出版 (本学図書館所蔵)

   人はなぜ嘘をつくのか、嘘を見破ることができるのか、といったテーマに対する関心は高いので、いくつもの本が出版されています。しかし、実証的研究成果に基づいていない本が多く、基づいている場合でも、1980年代に書かれた「暴かれる嘘」などのEkmanらの研究成果を参考にしていることが多いのが実情です。
   1990年代以降はどんな研究が行われているのでしょうか。この本はそんな疑問に答えてくれます。嘘に関する心理学的テーマ、例えば「嘘の手がかりの有効性」「嘘を見破る」「嘘をつくのはどのような人か」「生理学的反応による虚偽検出」などについて、実証的研究を簡潔に紹介しています。やや難しい内容の章もありますが、最初から順に読む必要はなく、関心のあるテーマの章・読みやすそうな章から読めばよいでしょう。
   ちなみに、こうすればずばり嘘を見やぶれる、という便利な方法はないようです。やはり。

(推薦者  待田昌二  教員    2016年2月)

 
No.1
 犬のココロをよむ : 伴侶動物学からわかること  菊水健史・永澤美保  岩波科学ライブラリー (本学図書館所蔵)

   イヌはもっとも身近なペットですので、イヌの習性についてはテレビなどでよく紹介されますし、多くの本が出版されています。しかし、経験的に知られているだけのことや古い研究に基づいていることも珍しくありません。イヌの行動や心理についての科学的な研究に基づいた本はそれほど多いわけではありません。この本は日本人研究者が、近年の科学的研究を紹介しながら、イヌの感覚や行動・心理についてわかりやすく解説した本です。イヌの心理・行動について調べたいと思っている人が最初に読む本として適しています。
   この本では特に、人の意図や感情をまるで読んでいるかのようなイヌの能力を紹介しています。そういったイヌの能力は、イヌを飼っている人なら誰しも感じるものですが、科学的に明らかになっているとは言えませんでした。人間における共同注意研究やサルの他者理解研究の問題意識や実験方法が、イヌにも当てはめられるようになったことで研究が進展したことが伺えます。「ココロをよむ」とういうタイトルは、人間がイヌの「心」を読むことを意味しているだけでなく、イヌもまたヒトの心を読むことを意味しているように思えます。

(推薦者  待田昌二  教員    2015年5月)