第1回

          

             (NO2)

 

                    

       

       大学 国文学科二回生 

              佐々木育子(山藤)

 

  

 Meridaの街をもっと知りたいと思い、翌日が日曜日でもあったので留学生に市内ガイド&通訳をお願いしました。
 先ずエルビラ邸より徒歩5分のインターネット・カフェに行き日本の家族や友人に無事メリダ到着を伝えました。もちろんアルファベットキーだけでローマ字mailです。1時間10ペソでカフェ通いは私の日課となりました。1ペソは約10円です。
 鉄道がないので交通機関はバスかタクシーでしたが、バス停は始発駅と終着駅だけで、行き先の番号のバスを見つけたら手を挙げて、運賃は先払いなので4ペソ(一律)を握りしめて走りながら飛び乗ります。メリダ滞在の約2週間ほとんど毎日80番バスでソカロ(中心広場)やメルカド(市場)まで一人で出かけましたが、その間バスの扉は一度も閉められることはありませんでした。

 ソカロではハラナというユカタン独特のメロディーで踊るダンス、バケーリアという民族舞踏をしていました。軽快な音楽に乗せて美しい民族衣装テルノの男女が踊るダンスは華やかで楽しいものでしたが、その踊りには昔、従属させられた民族と征服者へのあこがれのような悲しみが込められているのが伝わってくるようでした。そしてユカタンの人々の民族意識は強く、土地のフォークロアの世界がとても大切にされているのを感じました。
 
ダンスや音楽のイベントは毎日のように市内のどこかで開催されていて、巧みなステップを見ても生まれながらのリズム感と腰の流れるような動きの美しさに感嘆しきりでした。

 午後から、旅の目的であるユカタン大学の学生達との「茶道教室」開始でした。代表のダニエルは純粋なマヤ人で、相当な“日本大好き”青年は20才の学生でした。今や世界的流行“漢字プリントのTシャツ”を着ていて「元気を出せば何でも出来る」の日本語を自慢そうに見せてくれました。
   
彼は「憧れの日本の茶道を教えてもらうのを心待ちにしていた」とじっと目を見つめて話してくれました。

 ユカタン大学人類学部考古学科の学生が総勢25名集まりました
 自己紹介で順番に「私の名前はクリスティアンです。・・・と全員が練習した日本語で名前と出身地を紹介してくれました。私も覚えたてのスペイン語で自己紹介をしました。
 T外大スペイン語学科の留学生、真里に通訳を依頼し、茶道稽古が始まりました。 

                            

 最初、彼らに日本のイメージをたずねると武道・着物・富士山・アニメ(日本のアニメが毎日テレビ放送されています)・桜・漢字そしてテクノロジーなどでした。

 今度はMexicoについてどんなイメージかをきかれ、
先ず世界遺産のピラミッド・サボテン・チャロー・ハット美しいエメラルド色の海・タコスとチリソースなどそして256年で滅び歴史から消えていったマヤ文明にも興味があることを伝えました。

 
すると彼らも日本の文化に大変興味をもっていると目を輝かしたのです。

 茶道の理念「和敬清寂」をスペイン語に訳すのに、真里と辞書を片手に悪戦苦闘しながらも何とか伝授を果たしました。 
 “お茶の心とは平和と調和つまり人と人との和を大切にします”
お菓子やお茶をいただく時、周りの人に対する思いやり、気配りとして”感謝のこころ”を 表現する「お先に頂戴致します」の言葉があります。

    

 

 

  ここでは簡単に、となりの人の名前を呼び「お先に」とお辞儀をする事にしました。思いの外みんな気に入ったようで「○○・・・オサキニ」とお互いにお辞儀をし、楽しそうに挨拶を交わしました。

 「セレモニエ・デ・テ(お茶会)」本番の日です。  

ふくさで棗・茶杓を清め、薄茶点前を始めると静寂の中“50の瞳”が一挙一動に集中し、その熱い眼差しを終始身体中に受けたのでした。

 干菓子と抹茶は“とてもおいしい〜”と、喜びの声に私の頬もゆるみホッと一息つきました。
点前を真剣な眼差しで見ていた学生達に「茶筅通し」をやってみたい人?ときくと、いっ
せいに“シィ!(ハイ)”の手があがり、全員が薄茶点前の割稽古を修得したのでした。

                                     

 セレモニエ・デ・テが終わった時クリスティアンが私の前に正座をして
「貴女の国の文化に触れる事が出来とても幸せでした。 茶道はとても美しくそしてとても楽しかった。この日のことは絶対に忘れません」と感謝の言葉を束にして贈ってくれたのでした。  

           

                         

-----  次回は最終章です -----