千と勢会(ちとせかい)は松蔭同窓会の名称です。
その由来について、約30年前に大学同窓会報に掲載された朝子あう先生の文章を引用させていただきながらご紹介いたします。併せて「松蔭女子学院百年史」も参考にさせていただきました。
「松蔭の同窓会が初めて開かれたのは明治35年、1902年の4月でした。学校創立代表者フォス監督邸で、十数人の同窓生と、数名の先生とでおこなわれた発会式の写真が、今でも残っています。」
今からちょうど100年前のことです。 その後、会報誌の名前から千と勢会と名付けられたそうです。また、千と勢という言葉は聖歌第387番「ちとせのいわよ」(Rock of Ages)の最初の部分です。
ちとせのいわよ わがみをかこめ
さかれしわきの ちしおとみずに
つみもけがれも あらいきよめよ
Rock of Ages cleft
for me, let me hide myself in thee
Let the water and the blood,
From the riven side which flowed.
Be of sin the double cure, Cleanse me from its guilt
and power.
この聖歌ができたいきさつは次のようです。
「この聖歌は信仰の厚い英国人によって、最も愛唱されている聖歌の1つです。 作者はある片田舎に住む牧師さんでした。 ある日彼は友達と、色々当面の問題について議論した後、もやもやした思いを胸に抱いて、ただ一人山道を通って、家路に向かっていました。
丁度彼が断崖の上にさしかかった頃、突然烈しい突風におそわれました。逃避する木陰もない山頂で、やっと見つけた大きな岩陰に身を寄せて彼は、嵐がおさまるのを待っていました。今にも絶壁の谷底に、吹き飛ばされそうな彼は、必死にその岩にしがみついていました。その瞬間に彼の心の中に湧き上がってきた祈りの言葉がこの歌でした。」
聖書の中には度々「岩」が登場し、それは永遠のもの、我々の身を守ってくれるものとされています。日本でも古来、岩に対する信仰があったことはよく知られていることです。おそらく、この同窓会がちとせの岩のように、永くかわらず、神のみ心にかなう会であるようにとの思いから名付けられたことでしょう。
朝子先生の文章は
「ちとせの岩なる神への救いを求めるこの力強い訴え、必死に祈る心は二百年を経た今日もな お、多くの人々の胸を打つものを持っています。」と結んであります。
なぜ、ちとせ(千歳、千年)が「千と勢」の字をあてられたのかわかりません。
また、この聖歌は2種類の旋律があります。同窓会やその他の行事の始まりに歌われていますが、中・高の千と勢会では最初の方が、大学・短大の千と勢会では後の方が歌われているようです。
これもちょっと不思議です。
もし、何かご存じの方がいらっしゃいましたらお教え下さい。
多くの会員を擁するこの千と勢会がその名称の由来のように、本来の目的を忘れることなく永く続きますようにと、あらためて、名付けられた方々の願いを深く思います。
参考
1971年発行「大学同窓会報」第一号
1992年発行「松蔭女子学院百年史」
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